全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

タンパク質、プロテイン・サプリが必要?食事で十分?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

タンパク質の話題が続きます。気になるのは、このところますます一般的になってきているプロテインやアミノ酸の粉末、いわゆるタンパク質・アミノ酸関連の健康食品です。実際、健康な毎日を維持していくのに、そうしたものを活用したほうがいいのでしょうか?

大西睦子の健康論文ピックアップ60

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

前回に引き続き、プロテイン(タンパク質)※1の話題です。今回はサプリメント※2に関して、さらに詳しく考えてみましょう。栄養補助食品※3の使用は、アスリートや運動を楽しみとされている方などに広まっていますよね。でも、普通の食事以外に、実際どのくらい栄養補助食品が必要なのでしょうか?


欧米では、筋トレをするアスリートにおいて、無秩序な栄養補助食品の使用が問題になっています。先日、英国から以下の報告ありました。研究者らは、栄養補助食品の使用によってドーピングテストにひっかかったアスリートや、健康への有害事象などを例に、栄養補助食品の使用法について警告を促しています。

Ronald J. Maughan
Quality Assurance Issues in the Use of Dietary Supplements, with Special Reference to Protein Supplements
J. Nutr. November 1, 2013
doi: 10.3945/jn.113.176651


これまで欧米を中心に行われてきた、一般向けのサプリメントに関する研究では、ビタミンDとオメガ3のサプリメントの有効性以外は証明されておらず、逆に有害性も指摘されています。同様に、アスリートの使用するサプリメントについても、身体や精神面に対する悪い影響が懸念されています。アスリートにおけるサプリメント使用の調査では、一般にプロテインが最も人気です。2004年夏季オリンピック選手についての調査では、食品サプリメント(45.3%)の使用が最も人気で、続いて ビタミン類(43.2%)やプロテイン/アミノ酸(13.9%)が使用されていました。


パフォーマンス向上のためのサプリメントの使用はアスリートに特有で、かなり若い時から使用し始めます。近頃行われた米国の若者に関する大規模調査では、サプリメントの使用は、米国全体で5%から17%の範囲でした。


プロテインの品質

実際、2010年の以下のレビューでは、市販の24のサプリメントのうち、製品の31%が品質保証テストに不合格であったことが報告されました。別の調査では、ニューヨーク都市部やオンラインを中心に購入した15種類のプロテイン粉末と飲料において、ヒ素、カドミウム、鉛、水銀の含有について試験が実施されました。分析の結果、そのうち3製品から、安全レベルを超えた重金属のレベルが検出されました。こうした問題は、製造および貯蔵の過程で生じます。FDAのウェブサイトではサプリメントについて、未申告のアレルゲンや微生物汚染、異物の存在などの問題が、頻繁に報告されています。

ConsumerLab.com. Product review: protein powders & drinks (includ- 
ing sports, nutrition, and diet products) [cited 2012 Nov 26].


ドーピングの問題

「ドーピング」※4として知られるアナボリックステロイド※5(anabolic-androgenic steroid nandrolone、蛋白同化ステロイドとも呼ばれます)は、筋肉増強剤として使用されています。国際オリンピック委員会においても、アナボリックステロイドの使用によるドーピング※4は問題となってきました。2000-2001年における13ヶ国のアスリートへの製品販売に関する調査では、215の業者から計634の非ホルモン栄養補助食品が購入されていました。より最近の調査では、 2007年に米国で標準的な小売店を通じて購入された58のサプリメントを分析した結果、25%に低レベルのステロイドが、11%に興奮剤が、混入していました。それらの中には、実際に健康被害を引き起こす可能性があるサプリメントも含まれますが、特定は難しい場合もあります。特に、海外のプロテインを使用されている方は、これらの混入に注意の必要があります。安心できるメーカーのものを使用するべきです。


サプリメントか食品か?

アスリートの方がサプリメントとしてのプロテインを使用する理由のひとつに、便利さがあります。例えば、摂取できるタンパク質量がすぐに把握できます。かたや、食品や料理には通常、成分表示はなく、タンパク質量を把握するには栄養に関する知識が必要です。それでも、サプリメントの多くと異なり、知識に基づいてきちんと献立(組み合わせ)を考えれば、食品中のタンパク質から、すべての必須アミノ酸※6を摂取することが可能です。ここで、たんぱく質の知識を共有しておきましょう!


タンパク質は、炭水化物※7と脂質※8と同様、三大栄養素のひとつです。タンパク質は、私たちの体の皮膚、爪、毛髪、筋肉、内臓などを構成しています。さらに、様々な酵素※9、神経伝達物質※10、ホルモン※11や免疫に関与する抗体を作るためにも欠かせません。


ご存知の通り、肉、魚、乳製品、卵や豆は高たんぱく質の食品です。また、玄米、全粒小麦、野菜やナッツなども、タンパク質を含んでいます。しかしながら、魚を摂取しても、魚のタンパク質がそのまま私たちの体に必要なタンパク質にはなりません。私たちが食事から摂取したタンパク質は、胃や腸で消化酵素の働きによって、タンパク質→ペプチド(少数のアミノ酸が結合したもの)→アミノ酸(タンパク質を構成する最小単位)にまで分解されます。
その後、アミノ酸は小腸で吸収されて肝臓に運ばれ、体内で再び必要なタンパク質に作り直されます。


体を構成しているアミノ酸は20種類あり、これらを組み合わせて様々なたんぱく質を作ります。それらのアミノ酸のうち、11種類は、体内で合成できます。一方、体内で合成できない9種類は「必須アミノ酸」と呼ばれ、食事から摂る必要があります。食品のアミノ酸の構成比を栄養価で評価した数値をアミノ酸スコアといい、私たちの体を形づくるタンパク質の合成に適したものほど、アミノ酸スコアは高い優れた食品とされます。ただし、1食ですべての必須アミノ酸を摂取する必要はありません。なぜなら、ヘルシーな食事の組み合わせによって、1日トータルで見て運動をする方でも十分なアミノ酸を摂取できるからです。


どれだけ食べればいいの?

1日に必要なタンパク質量は、体重1kgあたり約1gと言われています。本格的な筋トレなどを行っているアスリートな体重1kgあたり2gは必要と言われています。まず基本は、様々な食品からタンパク質を摂取することです。プロテインパウダーは、質がよく栄養価の高い健康的な食事を補うために使用される、あくまでも"サプリメント"です。前回のコラムも参照にして頂きながら、タンパク質をどれくらい摂れば良いのか確認してくださいネ!

1 |  2 
  • 患者と医療従事者の自律をサポートする医療と健康の院内情報誌 ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索