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高価なロボット手術 患者には利益なし?

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内側から見た米国医療20

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。12年7月からメイヨークリニック勤務。

「ダ・ヴィンチ」など手術を補佐するロボットが実際の診療で使われるようになってから、米国では既に10年以上が経過しています。

 ロボット補助手術では、ロボットアームの一つに付いているカメラから手術部位の映像が映し出され、外科医は顕微鏡を覗き込むようにその映像を見ながら、両手でロボットアームを操作して、手術を行います。

 手術補助ロボットが登場した当初は、画期的な技術としてもてはやされ、多くの病院で導入が進みました。ロボットは、従来の手法に比べて精緻な操作を可能にし、手術の安全性を高め、合併症などを減らすと考えられました。また、従来なら大きな傷跡を残す方法でしか実施できなかった手術が、ロボットアームが入るサイズの小さい傷口で済むようになると考えられました。患者も医師も大きな期待を持っていたのです。ロボット補助手術の適応は徐々に広がり、胆嚢や胃を含めたお腹の手術や、前立腺や子宮などの骨盤内手術などに使用されています。

 しかしながら、これらの手術の多くは、同様に小さな傷跡しか残さない通常の腹腔鏡手術でも実施可能であり、ここ最近ロボットの有効性を疑問視する研究成果が相次いで発表されています。特に、患者をロボット補助手術と通常の腹腔鏡手術に無作為に割り振って両者の結果を比べた研究では、ロボット補助手術において費用が余計にかかり、手術時間も長くなる一方で、出血量や入院期間、合併症といった指標には差が見られないという結果ばかりが報告されています。

 これらが本当だとすれば、1台1億円以上もするロボットを導入する利点は少なくなります。患者集客には効果があるかもしれませんが、患者にとっての医療上の利益は非常に小さくなると言えるでしょう。

 残念ながら、新しいものが常に良いとは限らない、というのが医療の現実です。同様に、新薬が次々と発売されますが、すべての新薬が、より安く効果が実証されている既存の薬と比べて優れているとは限りません。

 現実的には、既にロボット補助手術に慣れている外科医がたくさんいるため、それらの病院でロボット手術を急に中止するわけにはいかないでしょう。一方で、ロボットを新規に導入する病院は少なくなってくるかもしれません。

 とはいえ、先進技術を用いた手術にはまだ未来があると思います。例えば、外科医が現在"手術勘"で行っている部分を補強してくれる機器が開発されたらどうでしょうか。これはロボットという形態かもしれませんし、体に装着するデバイスのようなものかもしれません。手術の上手さには大きな個人差があり、それゆえ"神の手"と呼ばれる外科医がいます。しかし、普通の外科医でも彼らの"視覚"や"触覚"に近づくことができるような技術が開発できれば、すべての外科医が"神の手"により近づくことになり、未来の外科治療を大きく変えるかもしれません。

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