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なぜ裕福な東京でワクチン接種率が低いか
『現場からの医療改革推進協議会 第7回シンポジウム』セッション8からのご紹介です。現在、「緊急促進事業」として国費助成の行われているHPV、ヒブ、小児用肺炎球菌3ワクチン接種率が東京都で低いとのデータが示されました。不思議な話だと思いませんか?(堀米香奈子、川口恭)
この発表は、「希望するすべての子どもたちにワクチンを!」パレード実行委員長の吉川恵子さんによって行われたものです。吉川さんの本業は、千葉県保険医協会事務局次長だそうです。
さて、東京都の接種率が低くなる理由は、この「緊急促進事業」の費用負担法にありそうだとのこと(下図参照)。
国は各都道府県を介して「子宮頸がん特例交付金」として45%、さらに地方交付税交付金として市区町村に直接45%を交付して、全体の90%を公費でカバーしています。市町村が残りの10%を負担すれば無料接種となります。実際、千葉県では全市町村で無料接種になっているそうです。ところが、東京都が財政的に豊かで地方交付税交付金をもらっていないため、市区町村の負担が大きくなり、無料接種でない所が多くなっているのだそうです。
その結果が冒頭に示したデータで、吉川さん曰く「接種率は対象者の数や対象時期をどの時点とするかで数字が変動するため、単純な比較はできないので、概況として見ていただきたいのですが、東京都は全国平均を大幅に下回っています。ちなみに、昨年度の千葉県の接種状況はヒブで43.5%、小児用肺炎球菌は48.4%と全国平均を上回っています。接種率を上げるには、保護者への周知方法や電子台帳の整備など、様々な課題がありますが、特に保護者の自己負担が大きく影響していると思われます」。
分析を裏付けるのが、「東京保険医協会の森田さん」調べによる『東京61自治体の3ワクチン助成状況と一人当たりの接種回数』(下図)で、黒い部分が都の平均、右へ行くほど回数が多く、左は少ないです。「3ワクチンとも全額助成をしている自治体が右側の上位群に集中していることが分かります」とのこと。
予防接種法に位置づけて定期接種化するか、「緊急促進事業」として国費助成するか、ほとんど同じことだと思っていましたが、実際には「命の格差」が生まれているんですね。なお、このセッション全体に関する報告は、こちら(その1、その2)をご覧ください。