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「目指せ手洗いマスター~手洗いワークショップ」の報告
2月2日3日の午後、西東京市の多摩六都科学館で「目指せ手洗いマスター~手洗いワークショップ」を実施しました。科学館の方と共に、科学館らしいアプローチで医療と科学をつなぐようなワークショップができないかと考え、科学的な展示イベントと手洗い講座をミックスさせた新しい試みになりました。読者の皆さんでお越しくださった方、どうもありがとうございました。
吉田のりまき
薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰
インフルエンザが流行る時期とはいえ、「手洗い」といったテーマではさすがに来場者が少ないのではないかと心配をしていました。ところがなんと、土日ともに予想を上回る大勢の方にご参加いただき、特に親子連れのご参加が多く、一瞬にして会場がいっぱいになってしまったこともあったほどです。嬉しい! 本当に嬉しい! 感謝感激の2日間でした。
展示では、単に見て歩くだけといったことにはせず、自分の手を動かすアクティビティを多めに取り入れました。たとえば手に片栗粉を付け、いったん手をはたいて片栗粉を落とした後にその手を実体顕微鏡で見るというようなもの。粉がついていないように見えても手のしわや指紋や爪の周りに粉が残っていることがよく分かりました。また、微生物についても、名前を列挙するだけでなく、食品に入っている身近なものから、大学の微生物検査室の方のご協力を得たものまで、できるだけ本物を用意し個々にじっくりと観察していただきました。難しい名前の細菌やウイルスの知名度が意外と高く、知っている微生物が出てくると親近感を持って観察してくださいました。
全体のメッセージとしては、「見えない生き物である微生物は必ずしも体に悪いものばかりではない。体の中にも微生物はいるし、生きているから体の中で増え役に立っているものもある。絶対に体の中に入れてはいけない微生物かどうかが肉眼では判別できない。だからこそ手を洗おう」というものでした。そして、正しい手洗い方法といったものをご紹介し、実際にできているか、みなさんの手洗いを2つの方法でチェックしました。
一つは、ルミテスター®という機器を使用する方法で、手洗いの前後で手についていたある物質の量が減るかどうかを調べるといった実験です。
もう一つは、手全体にローションを塗り、手洗い後にローションが残っているところがないかを調べるものです。このローションは塗っている時は透明ですが、ブラックライトをかざすと白く光ります。洗って全部落としたつもりでも、ブラックライトにかざすと指の間や手の甲に白い部分が残っていることがあります。洗い方のクセが分かり、洗い残し箇所を視覚的に確認することができます。
手洗いチェッカー®
健康に関連するワークショップでしたので、科学館だけでなく多摩六都科学館エリアの保健所にもご協力をいただくことにし、感染症予防の啓発リーフも配布しました。多摩小平保健所では、同じようにローションで洗い残しを調べた1423人のデータがありましたので、手洗い前に参加者にも見ていただきました。
このような手洗いチェックは、専門的な試薬や機器を使ってはいますが、直接病原菌の数を測定したり全部の汚れを検出したりしているわけではないので、手洗いの前後で何らかの変化がある、ということを示しているに過ぎません。一つの目安になるだけです。ですが、目安だからこそよい点があります。真剣でありながらもちょっとしたゲーム性があり、大人も子どもも一緒になって楽しくトライできるのです。互いに比較し合うので、それぞれに得手不得手があることが分かり、自分の手洗いをもっとうまく行おうという気持ちが生じやすいのです。
さらに、同じ体験をしていることにより、そのまま友人やご家族と情報や気持ちをすぐに共有できます。感染症といったテーマでもコミュニケーションを十分に深めるきっかけになります。個人だけでなく友人やご家族といった単位で盛り上がると、感染症を予防する気持ちも広がりやすくなります。また免疫力が低下した乳幼児やお年寄りの方がご家族にいる場合、家族全体でどのように気を付けていけばよいのかといったことを考える機会になり、自分のためだけでなく人への思いやりから自然と手を洗おうという行動につながっていきます。
これからもこのようなワークショップをご友人やご家族が一緒になって楽しめる場所で、もっと行っていきたいと思っています。そして、個人、家族、地域といったコミュニティレベルで感染予防をしようという気持ちにつながる一助になればとても嬉しいです。