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健康考えるヒント満載 教科書を読んでみよう

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大人が受けたい今どきの保健理科1

吉田のりまき

薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰

 皆さんは、保健の授業のことを覚えていらっしゃいますか。雨が降った時に体育が保健に変わったという記憶はあっても、何かを体系的に学習したという覚えはないという方も多いのでは。

 せっかく義務教育の科目として存在するのですから、大人になってからも役に立つ、病気を予防したりセルフメディケーションを行ったりする、そんな健康維持のベースとなる考え方を教えてほしかったと思っていませんか。

 羨ましいことに、今どきの義務教育の保健は、そうなっています。学習指導要領では、小学校の保健が平成23年度から、中学校の保健は平成24年度から完全に新しいものに移行しています。

 教科書も(地元の教科書センターへ行ってすべて見てきました)、健康を意識している大人世代が読んでも面白いような読物になっていました。

 学習内容としては、生涯を通じて自らの健康を適切に管理し、改善していく資質や能力を育成するといったことが重要視されています。健康を保って病気を予防するためには、個人が積極的に努力するだけでなく、個人の健康的な生活を支える社会の取り組みが必要であることも示唆されています。中学の保健では、医薬品の適正使用についての学習も加わりました。

2科目を関連づける

 このように今どきの子どもたちは、健康を保ち病気を予防するために、個人が積極的に努力する必要があるということを、保健で学びます。

 ただし意図が良くても方法が悪ければ逆効果になりかねません。間違った努力をしないためには、自分たちの体について正しく理解しておく必要があります。構造的なことだけでなく、生理学的な体の働きや、周りの環境に合わせた体の反応について基礎知識が必要になってきます。

 そんな基礎知識であるヒトの体については、主に理科で学習するようになっています。

 あれ習ったかなと首をひねるかもしれません。以前は、中学の理科でヒトに特化せず動物全体について学習していることが多く、海外の教科書と比較すると不十分な内容でした。しかし、こちらも最近になってヒトの体に力を入れるよう変わってきたようです。

 一例を挙げますと、かつては中学理科で教えていた骨格や関節、筋肉といった学習を小学4年生で実施するようになりました。また、中学3年生では、遺伝子診断や個別化医療を考える上で必要になってくる遺伝の規則性と遺伝子の単元が加わっています。

キーワード「恒常性」

 医療従事者の立場からも評価できる学習内容の変化ですが、とは言え、教科の枠を超えて理科と保健の知識を関連づけ自分のものとするには、ちょっとしたコツが必要です。

 それは、両者をつなぐキーワードや概念を手に入れることです。私は、「恒常性」という概念が適切でないかと考えています。聞き慣れない言葉かもしれませんが、示す概念は理解しやすいものです。

 ヒトの体では、臓器や骨格が互いを助け合うために持ち場を離れることはありません。それでも、いつもと違う不具合がどこかで生じると、なんらかの伝達手段で離れた器官にSOS信号が出され、体の各器官は持ち場を離れることなく全体で連携や調和をはかり、いつもの状態に戻していきます。離れていても連携体制が取れるのは、血管や神経が全身に巡らされているからで、ホルモンという郵便物が血管で配達され、神経系で直接電話をしている、と比喩することができます。

 このように多少不具合があっても、早急にその不具合を察知し、体が連携し合って、いつもの最適な状態に戻し、いつもの状態を保とうとする仕組みを「恒常性」と呼ぶのです。

 この仕組みがあるために、少々の不具合には動じず健康でいられるのですが、とんでもない生活を続けていると保てなくなって、生活習慣病になっていくのです。

 恒常性は主に高校生物で学習する概念ですけれども、中学でも体温を一定に保つ働きについて学びますので、いつも通り体が保たれているという考え方は中学生にも十分に理解できることと思います。皆さんにも違和感なく受け入れていただけると嬉しいです。

 ちなみに、中学では血液が様々な成分を運ぶことも学びます。ただ、それぞれの成分が血液中に一定の量になるよう恒常性が働いてることは、あまり触れられていません。予想外の量を運ぶと血管そのものがダメージを受けてしまいます。血管は持ち場を離れることなく連携を取り合っている器官の間をつなぐライフラインですから、ダメージを受けると生活習慣病だけでなく、もっと大きな疾病につながるのは誰でも容易に想像がつくのではないでしょうか。

 このコーナーでは、義務教育の保健と理科の内容に触れながら、皆さんの健康維持に役立つヒントをご紹介していきます。ご愛読よろしくお願いします。

教科書をご覧になりたい方へ  都道府県が設置する教科書センター一覧は、文部科学省のサイトに掲載されています。

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