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筋肉モリモリ意識して 寝たきりを遠ざけよう
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大人が受けたい今どきの保健理科4
吉田のりまき
薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰
前回の骨に続いて、今回は体を動かすために必要な筋肉のお話をモリモリとお届けします。
実は知らない
スタチン系薬剤が処方され始めた頃のことです。服薬指導の時に、横紋筋融解症という副作用のお話をしても、大概の人に通じませんでした。想像もできない言葉で、どこにある筋なのか、どういう痛みが出るのか分からず副作用を見逃すのではないかと不安になってしまう人もいました。
そもそも医学用語自体難しいものですが、この場合は理科用語でもある「横紋筋」が分からないのです。確かに義務教育では「横紋筋」という言葉は出てきませんから、薬の解説書に書かれていても困惑してしまうのでしょう。
義務教育では骨の脇役
こんな経験をしてから、筋肉は、体の中で視覚的にも体感的にも一番身近な存在なのに一番知られていないのではないか、と思うようになりました。
理科では、まず小学4年で、肘の曲げ伸ばしをする時に筋肉が関わっていることを学習します。教科書によっては、サッカーでボールを蹴ろうとしている写真があり、その時の骨と筋肉の動きを考えさせる設問もあります。中学になってからは、2年の体が動く仕組みの単元で、肘の関節での筋肉の動きをさらに学習します。やってみようというコーナーでは、鶏肉の手羽先の観察実験が紹介されています。
基本的にこれらは骨に関係する筋肉の働きを示すもので、筋肉そのものについて記述されているわけではありません。中学理科の、細胞のつくりや組織・器官といった単元の中で、筋肉の細胞、心臓の筋肉、筋繊維を紹介していますが、どこにも横紋筋という名称は出てこないのです。
保健では、体の成長時に筋肉が増えていくことや、体を鍛えようという教育はされていますが、筋肉の構造については当然全く出てきません。ただし、骨を動かす全身の筋肉図は巻末に必ず掲載されていて各筋肉の名称が添えられています。
さて改めて「横紋筋」に戻りましょう。筋肉は横紋筋と平滑筋の2種類に分けられます。筋肉の表面に縞模様が見えるものが横紋筋、見えないものが平滑筋です。横紋筋は、筋の繊維のある部分がスライドすることで伸縮できます。大雑把に言うと、このスライドの構造部分が縞々(横紋)に見えているのです。分かってみれば意外と簡単ですね。
学校で学習する骨格筋には横紋があります。また、筋肉は、内臓のように中が空になった袋や管の壁部分にもあります。この筋肉には横紋がありません。さらに、心臓の筋肉は、分類上横紋筋ですが、骨格筋とは大きく異なっています。
そこで、筋肉を分類する時は、横紋筋と平滑筋というより、骨格筋、心筋、平滑筋の三つに分けることの方が一般的です。ちなみに、自分の意思で動かせるかという観点から随意筋、不随意筋といった分け方もあります。
(小見出し)
平時にも意識して
不随意筋は文字通り意識して動かすことができないので、随意筋である骨格筋をどう動かしたらよいのか考えたいと思います。皆さんの中には将来寝たきりにならないようにロコモティブシンドロームを意識されている方もいらっしゃると思います。良い栄養を摂り、体重を落とすためにダイエットをし、ウォーキングをすることはとても良いことです。折角なので、筋肉をもっと意識してウォーキングしてみてください。
歩行の時には、まず体をしっかりと立たせる姿勢を取るために筋肉が働いています。左右に体が揺れるので、バランスを取る筋肉もあります。そして、全体を前に出す筋肉、空中にある足を支える筋肉、足が着地する時の筋肉、足の指が地面を蹴り出すときの筋肉など、どの動作でどの骨格筋が伸びたり縮んだりしているでしょうか?
全部の筋肉をいちいち意識していると、ぎこちない動作になってしまいます。そこで、重力という視点から自分の筋肉を大事にするように心がけてみてはいかがでしょうか。重力に逆らって体が倒れないように、重力のある地球上に生まれてからずっと骨を支える骨格筋が働いているのです。
このような筋を抗重力筋といいますが、加齢と共に弱るのがこの抗重力筋なのです。何もしないとどんどん衰えていき筋繊維が細くなり数も減ります。歩幅が小さくなって歩行も遅くなり、つま先を上げる力が減って転びやすくなります。
筋肉が減少することをサルコペニアといいます。最近では間違ったダイエットをして適正体重の範囲であるにもかかわらず筋肉をつくるタンパク質が不足した低栄養状態になっている人がいます。運動をしていてもサルコペニアになってしまうので、筋肉の源もしっかり摂取してください。
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