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認知症を知る9 夜眠れないのを何とかしたい
※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。
体内時計の乱れ
改めて言うまでもないことながら、睡眠不足の介護者には、疲労やストレス、フラストレーションが蓄積します。結果として感情的に爆発してしまうこともあり、我に返った後の罪悪感とのスパイラルで、精神的にも追い詰められていきます。介護者の睡眠不足によって、在宅介護を続けられなくなることも珍しくないのです。
介護者が眠れなくなる理由はシンプルで、認知症の本人が夜中ぐっすり眠ってくれないからです。介護者は、夜中に起きた本人が危険なことをしないだろうか、家から出て行きはしないだろうかと、常に緊張を強いられ眠りが浅くなります。裏を返すと、本人が夜中ぐっすり眠ってくれさえすれば、介護は随分と楽になるわけです。
ただし、眠らぬなら眠らせてしまえ、と睡眠剤を安易に使うのは厳禁です。これから説明するように、そのことがかえって事態を悪化させる可能性もあるからです。原因を的確に把握して、それを取り除く必要があります。
さて、認知症の人が夜中ぐっすり眠らない原因は、大きく分けると①生活リズムの乱れ②睡眠導入剤など薬剤の影響③頻尿の三つあり、複合していることもあります。
これらの原因を取り除ければ、介護者の睡眠不足が緩和される可能性は十分にあるのです。順に説明します。
生活リズム
加齢と共に睡眠の質が悪くなり、高齢者の場合は健常者でも睡眠中の小さな刺激で覚醒してしまうことが知られています。もともと熟睡しにくいわけです。
そして末期でもない限り、認知症になったからといって、健常な時より睡眠時間が大幅に増えるわけではありません。むしろ、日中の活動量が減って、居眠りなどしているならば、睡眠時間も減るのが当たり前です。
このように生活リズムが乱れて昼と夜とでメリハリがなくなると、体内時計も狂いがちになり、寝つけない、変な時に目が冴える、という悪循環に入りかねません。
よって、昼間きちんと起きて体を動かし適度に疲れるという生活を本人に送ってもらうのが、最初にやるべきことです。特に午前中に太陽の光を浴びると、体内時計のズレが補正されたり、抑うつ傾向が緩和されたりすることも知られており、屋外へ出てもらうのは大事です。
具体的な方法として、毎日の散歩というのは誰もが思いつくことと思います。付き添いきれないとか、本人がどうしても嫌がるとかで不可能な場合は、忙しく昼間を過ごすための役割や趣味を何か探してあげてください。そこに多少の苦労があったとしても、夜眠れないことと比べれば、はるかにマシのはずです。