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睡眠のリテラシー45

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高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 身内に介護が必要になった時、まずは自宅で介護を行うようになるのではないでしょうか。例えば、同居している親を介護するのは、自分を産み育ててくれたことに対する、いわば恩返しのようになるかもしれません。これはもちろん善いことではありますが、在宅で介護を行うには様々な苦労が伴います。

 その一つは、前回ご紹介したように、介護を担う家族がぐっすり眠れなくなることです。睡眠が十分にとれないと、心も体もクタクタになります。そういう状態が続くと、在宅では手に負えなくなり、施設に頼ることとなるでしょう。

 わが国は高齢化と相まって、少子化も進んでいるので、社会として介護にどう取り組むかは大きな課題です。介護サービス業に対する期待も増えています。特に、昼夜を通して介護を受けられることへのニーズは今後ますます高まっていくと考えられます。

 立場をひっくり返して、24時間にわたって介護を提供する側の介護労働者は、夜勤を含む交代勤務をしなければなりません。似たような職種である看護師に目を向けると、交代勤務に関して実によく調べられています。ところが、介護労働者の交代勤務については調査研究がまだ始まったばかりです。

 夜勤を含む交代勤務で働くと、健康に問題の生じることが多くなります。なかでも、睡眠に関わる問題はその筆頭です。以前、施設で働く約8百名(うち6百名は女性)の介護労働者を対象に、勤務形態と睡眠問題との関連を調べました。

 勤務形態は日勤のみ、3交代(日勤、夕勤、夜勤)、2交代(日勤と夜勤、うち9割は日勤8時間・夜勤16時間という編成)に分けました。睡眠問題として、寝つきが悪かったり、途中で目が覚めたりする症状の有無を尋ねました。

 睡眠問題のある割合は日勤のみの群が28%、3交代の群が36%、2交代の群が43%という結果でした。性別や年齢など関連する要因の影響を考慮しても、日勤のみの群と比べて、2交代の群の睡眠問題の割合は統計的にみて多いことが分かりました。しかも、2交代の群では月当たりの夜勤の回数が増えるほど、睡眠問題の割合は多くなりました。

 日勤、夕勤、夜勤という3交代は、いわば交代勤務の定番です。それに対して、日勤と夜勤からなる2交代では、夜勤が8時間より長くなるとはいえ、シフトの組み方が3交代より簡単になります。何より、夜勤が終わってから休みをまとめてとれるという利点があります。

 2交代は看護の分野で広まっているので、それに倣って介護の分野でも取り入れたのかもしれません。しかし、夜の仕事(介護)のきつさが日勤の時と同じかそれを上回るような場合、夜勤時間を延ばせばどうなるかは、すぐに想像がつきます。

 疲れ切った介護労働者が上手にケアできるとは思えません。介護という特別な仕事に応じた交代勤務のあり方をよく探る必要があります。

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