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この症状 ひょっとして病気?
(番外編)このページの記事は、ロハス・メディカルブログ2009年6月18日付掲載の『病的なむくみ こんな病気があります③』(筆者・堀米香奈子専任編集委員)です。久住英二医師の監修は受けておりません。
病的なむくみ こんな病気があります③
「病気なむくみ」の第3回。以下のようなむくみの症状について、原因疾患を見ていきます。
●脚のむくみ、倦怠感、動悸、筋力低下、手足の痺れがみられる。ひどい場合は、息苦ししさなど心不全の症状が現れる。
⇒ 【 脚気(かっけ) 】
●足の静脈が目立つ。立っているときに足が重くだるい感じがし、むくむ。痛みあるいはかゆみも。
⇒ 【 下肢静脈瘤 】
●むくみが主な症状。重症では、お腹に水がたまることも。さらに、下痢、吐き気、嘔吐、腹部膨満感、腹痛などの消化器の不調。子どもでは発育障害も。
⇒ 【 たんぱく漏出性胃腸症 】
それ以外の病的なむくみについての症状チェックはこちらへ。
※なお、むくみは、医学的には「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれます。
【脚気(かっけ)】
《症状》
全身の倦怠感、手足の重い感じ、膝ががくがくするなどし、筋力低下が見られます。同時に全身の軽いむくみと、脚の明らかなむくみが出ます。腹部の不快感と食欲不振、体重減少のほか、記憶障害や睡眠障害が出ることもあります。進んでくると、手足がちくちくと痛んだりしびれたりし、とくに脚の虚脱感や筋肉の焼けるような痛みがつらくなります。または心拍数が増加し、動悸がして息苦しくなり、心不全に至ることもあります。アルコール依存症の人は、脳にも異常が出ます。
《原因》
ビタミンB1欠乏症の進んだものです。ビタミンB1は、炭水化物からエネルギーをつくるだけでなく、神経および心臓の正常な機能に必要不可欠で、食事での摂取が必須です。ぬかに多く含まれていることが知られ、精製された白米を主食とする場合、ビタミンB1が欠乏しがちです。砂糖が入った清涼飲料水とインスタント食品中心の偏った食生活の人や、食欲の衰えた高齢者、ダイエットを心がけている若い女性には、潜在的に血中のビタミン濃度の低下している人がおり、要注意です。
《対処法》
ビタミンB1の内服や注射で補います。ただ、軽いビタミンB1欠乏は決してめずらしいことではないので、日常的に食生活から取り入れていくようにする必要があります。多く含まれている食物は、豚肉や豆類、ナッツ類、コーンフレークやオートミールなど。また、ぬか漬けも、ぬかのビタミンが野菜に移って一緒に摂取できます。
《参考サイト》
○ビタミンB1欠乏症 メルクマニュアル医学百科 家庭版 (万有製薬)脚気についての詳しい症状が載っています。
○ビタミンについての話 (兵庫県薬剤師会)ビタミンB1欠乏の歴史的エピソード、症状から食生活まで簡潔にまとまっています。
○古くて新しい脚気の話:六号通り診療所所長のブログ分かりやすい文体で読み物的に脚気の仕組みや実例が紹介されています。
○ビタミンB1の多い食べ物 ビタミネ
http://vitamine.jp/bita/bitab101.html
ビタミンB1を多く含む食品とその含有量が表になっています。
【下肢静脈瘤】
《症状》
脚がむくみ、血管(静脈)が浮き出て見えます。脚が痛む、だるい、重い、疲れやすい、かゆいなどの感覚があり、熱を持ったり、しばしば足がつる(こむらがえり)ようになります。立っているとなおさら症状がつらくなります。治りにくい湿疹が出たり、ひどくなると皮膚に色素が沈着して黒ずんだり、硬くなったり、皮膚がえぐれて潰瘍ができたりします。
《原因》
脚の静脈は、脚の血液を心臓に戻すための血管です。ですから正常な流れの方向は、下から上向きに、重力に逆らっていることになります。そのために、脚の静脈には竹の節のような形で「弁」が何個もついています。しかし、何らかの原因でこの弁が壊れてしまうと、静脈の血流は重力によって逆流してしまうのです。表面にある静脈は比較的この弁が壊れやすく、壊れてしまうとその部分の血液は上にうまく流れないために、余分な血液が溜まり、血管が膨らんで見えやすくなったり、脚がだるくなったり、多くの症状を引き起こすことになります。
《対処法》
最も手軽な対策が、医療用の弾性ストッキングなどで適度な圧力を与えることで下肢に余分な血液がたまることを予防するものです。あくまで進行防止・現状維持が目的で、下肢静脈瘤そのものが治るわけではありませんが、治療上とても重要です。本格的な治療としては、「ストリッピング手術(静脈抜去手術)」は、古くからある根治的な治療法で、病的な静脈を引き抜いてしまうものがあります。軽度の静脈瘤であれば「硬化療法」といって、弁に異常がある静脈の中に硬化剤という薬剤を注入して血管を詰める方法があります。最終的にはそうした血管は消えてしまいます。その他、異常な静脈と深部の正常な静脈の合流部を縛ったうえで切り離してしまう治療法や、異常な静脈の内部をレーザーで焼いて使えなくする方法、不全弁を作り直す弁形成術や血管内視鏡を使う手術もあります。
《参考サイト》
○下肢静脈瘤広報センター
写真入で症状から治療まで載っています。
○新見正則・白杉望による下肢静脈瘤のはなしと血管疾患のはなし下肢静脈瘤の簡単なまとめから詳しい(難しい)解説まで。
○下肢静脈瘤 (東京歯科大学 市川総合病院)
下肢静脈瘤全般について、とくに治療について詳しいです。
【たんぱく漏出性胃腸症】
《症状》
むくみが主な症状です。軽い場合は、顔面や脚などの限られた部位にとどまることもありますが、重症の場合や状況により胸水や腹水も見られます。多くは下痢、吐き気・嘔吐、腹部膨満感、腹痛など消化器の症状を伴います。さらには脂肪便(泥状便で酸性臭があります)や、子どもでは発育障害を伴うことがあります。子どもは特に下痢が多いです。
《原因》
血液に含まれるたんぱく成分、とくにアルブミンが消化管に異常にもれ出ることによって起こる「低たんぱく血症」により、むくみや消化器症状が出るものです。たんぱく成分がもれ出てしまうのは、何らかの原因疾患によるため。原因疾患は大きく2つの傾向に大別できます。①リンパ系の異常:腸壁から静脈までのリンパ管の形成不全や閉塞などのリンパの流れの障害や、静脈内の圧が上がることで、リンパ管内の圧が上昇し、たんぱく成分が押し出されます。②消化管の粘膜の異常:消化管の炎症・潰瘍や悪性腫瘍、アレルギー性の変化により、たんぱく成分が血管の壁を通り抜けやすくなります。こうした複数の疾患が関与している可能性もあります。
《対処法》
検査により、消化管へのたんぱく漏出が分かった場合、さらに原因疾患を調べて治療を行います。さらに、食事の基本は高たんぱく低脂肪食とし、消化吸収されやすい脂肪をとるようにし、アレルギー性の場合はその除去などにも気をつけます。症状を和らげるために、むくみや腹水に対しては利尿薬を用い、下痢や腹痛に対してもそれぞれ薬が処方されます。直接的にアルブミンを補うこともあります。
《参考サイト》
○蛋白漏出性胃腸症 (gooヘルスケア)
内容は難しいですが、言葉は平易で読みやすいです。網羅しています。
○蛋白漏出性胃腸症 - MyMed 医療電子教科書
「教科書」というだけあって難しいですが、大変詳しいので、よく知りたい方は拾い読みするといいかも。
○低蛋白血症/治療法は症状と原因から
たんぱく漏出性胃腸症により引き起こされ、むくみの原因となっている低たんぱく血症について解説しています。