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絵で見て分かる生活習慣病② 蓄えを使うホルモン貯めるホルモン
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インスリンは孤軍奮闘
同化ホルモンの代表格であるインスリンは、血糖値の上昇を合図に、膵臓のβ細胞から大量に血中に放出され、ブドウ糖を肝臓や筋肉、脂肪細胞に取りこませ、蓄えるように促します。結果的に血糖値を下げるのです。
当たり前のように書きましたが、実は、インスリンは血糖値を下げる唯一無二のホルモンです。血糖値降下には他に、小腸から分泌されるインクレチンというホルモンも関与しますが、あくまでインスリン分泌を促すもの。血中ブドウ糖を体に取り込ませることはできません。
血糖値を上昇させる異化ホルモンは前頁のように何種類もあるのに、血糖値を下げる同化ホルモンがインスリンだけなのはなぜでしょうか。
手がかりは、太古の人類の生存環境にあります。
当時の人類は飢餓と隣り合わせで、日常的にエネルギー不足でした。それでも獲物を見つければ直ちに追いかけて捕まえ、身の危険が迫れば全力で逃げなければならなりません。いざとなれば瞬時に血糖値を上げて脳や全身にエネルギーを供給し、判断・行動する能力が、生きるために不可欠だったのです。
つまり多数の血糖値上昇システムが用意されているのは、人類が獲得した安全機構というわけです。
想定外の栄養過剰で
人類にとって大きな変化は、第2次世界大戦後に現れました。多くの国で、急激に栄養状態(厳密にはカロリー不足)が改善されたのです。交通手段や家電の発達で体を動かす量が大幅に減ったことも手伝って、栄養が「いつも足りない」状況から「大量に入ってきて余る」状況となりました。
栄養過剰への転換は、インスリンの需要が格段に増えたことを意味します。問題は、それに体がついていけていないことです。
栄養過剰に転じて70年足らず、人類誕生から600万年続いた飢餓の歴史から見れば、まだ一瞬です。飽食によって大量に必要とされるようになったからといって、インスリンの代役がすぐに現れてくれるものではありません。
というわけで、インスリンの孤軍奮闘は今も続いていて、おそらく今後も続いていくのです。インスリンの分泌や作用がゼロの状態に陥ってしまえば、血糖を体内に取り込めず、早ければ1~2日で死に至るとも言われます。
生活習慣病の多くが、こうしたインスリン供給の脆弱性と想定外の栄養過剰を背景としています。先進国や発展途上国の都市部で、脅威は「飢餓」から「飽食」に変わったのです。