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「認知症にやさしい図書館ガイドライン」とは?

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会場.jpg高齢社会における図書館の新しい役割を築き、認知症の人や家族、高齢者など誰もに使いやすい施設にしていこうと「認知症にやさしい図書館ガイドライン」が昨年10月に公表されている。ガイドラインを作成した「超高齢社会と図書館研究会」運営委員の一人の松下太氏(森ノ宮医療大学教授)は3月3日に京都府内のイベントで解説し、「認知症にやさしい図書館ということは、皆に優しい図書館ということになる」などと説明した。


ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵

大阪大学大学院医学系研究科の山川みやえ准教授らが開いたイベント(開催趣旨などの説明はこちらの記事をどうぞ。「図書館が高齢社会での新しい役割を模索―地域包括ケアの一つの機能」)で松下氏が解説した。

◆ガイドライン本体は「超高齢社会と図書館研究会」ホームページからどうぞ。


ガイドラインは公立図書館などに向け、認知症の人や家族との具体的な接し方、情報提供の仕方などについて説明している。図書館スタッフに認知症サポーターを配置すること、地域連携の中で認知症の人や家族と保健医療福祉サービスとをつなぐこと、地域の地域包括ケアに連携し協力すること、認知症の人や家族のニーズ把握のための取り組みを行うこと――などの取り組みが示されている。

認知症の本人や家族に役立つ資料展示や情報提供、回想法キットの収集や貸し出し、関連イベントなどを行うことのほか、高齢者に見やすいカラーコーディネートにするなど空間への配慮も記載している。

ガイドラインはホームページ上で公開され、図書館職員や医療介護関係者の集まる学会や研究会などで発表されている。

松下氏はガイドラインについて「図書館員だけでなく、市民でともに作るもの」と強調。今月末までにガイドラインに対するコメントを受け付けて今年秋頃に改訂版を出し、その後も随時改訂していくとした。ガイドラインは「マニュアルではなく指針」とも述べ、個々の内容は図書館の実情に合わせた運用にされるのが望ましいと話した。

松下氏は取材に答え、「先進的な図書館の取り組みはどんどん進んでいくが、全ての図書館が追いつていくのは難しく、多くの図書館はまだ目が向いていない状況。ガイドラインがあることで一つの指針になり、多くの図書館が認知症にやさしい図書館に取り組んでいくきっかけになれば」と語った。


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同日のイベントには約90人の図書館職員、医療介護職などが参加。一般向けの認知症の普及啓発ツールとして、大阪府立天王寺高校の学生が手作りした日めくりカレンダーや、京大人間健康科学科の学生がつくった京都を舞台にしたすごろくなどが発表された。このほか、図書館関係者と医療介護関係者によるグループワークが行われ、「個人情報の扱いが厳しい中、認知症と思われる来館者をどうやって医療や介護につなぐのか」といったことなどが議論された。

筆者の所感だが、高齢社会での役割を模索してこうした活動に積極的に取り組む図書館もあれば、そうでない図書館もある。こういうイベントに積極的に参加するとしないとでは意識の差がどんどん開くだろうし、図書館に「医療・介護」といったテーマを課されるのは負担だと感じる人たちもいるかもしれない。医療介護との連携を考えた時、個人情報に敏感な公的機関ならではの難しさは常に伴うだろう。
しかし、前回の記事で主催者の山川准教授が

「地域包括ケアシステムとは、地域にある一つ一つの資源の価値が高められていくことだと思います。図書館を足掛かりにして広げていけたら」

と話していたように、この活動は図書館だけを見ているのではない。これを足掛かりに多くの施設、機関にこうした考え方が広がっていく可能性も秘めている。そうすると医療介護関係者だけで構成されがちな地域包括ケアシステムも、今よりずっと柔軟で、誰でもが関わりやすいものになるのではないかと思う。結果的に医療介護職の負担が軽減されることもあるだろうし、何より市民の生活が底上げされていくのではないかと思う。

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