全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。
臍帯血無届移植事件、そんな医師がいてもおかしくない?
連日報道されている臍帯血の無届移植事件。聞いているうちに医療に対する不信感が出てきた人もいるのではないかと思います。
驚く話ですが、この記事(ロハス・メディカル2013年7月号より)を読むと日本の医療界にはそんな医師がいてもおかしくないということが分かります(容疑が報道の通りだったと仮定して)。
ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵
上記の記事が書籍になったのがこちら『医師が「患者の人権を尊重する」のは時代遅れで世界の非常識?日本の医の倫理の欠点、その歴史的背景』ですが、そもそも日本の医師たちは「患者の人権を最優先して守らねばならない」などといった倫理を誓わされることはなく、そういう制度もないということが分かります。医師国家試験に合格すれば医師免許証が与えられ、医師となって現場で働くことができます。
簡単に言うと、「患者のことを第一に考えて医療を行う」という医師がいたら、それはあくまでその医師個人の善意によるものなのです。
一般市民は「医師」と聞くと、患者を救うことを何よりもの使命とし倫理観にも優れているというドラマに出ててくるようなイメージを期待しがちですが、彼らにはそんな倫理を持たねばならない縛りはどこにもないのです。今回のような行為を行う医師がいてもおかしくないのです。
筆者が今まで出会った医師の多くは「患者のために」「より良い医療を行いたい」と日々自身と周囲の研鑽に努める方々で、尊敬する方々が多くいました。しかし、自分が患者としてふと入った医療機関では首をかしげたくなるような態度をとる医師がいたこともありました。
筆者は書籍を読んで、今の医療界のモラルが医師個人の善意によってできているという非常に危ういものであるということが分かってから、これではいけないんじゃないかと思うようになりました。「良いお医者さんに出会えたからラッキー」とか「自分は患者のために頑張っていますから」とか、それはそれで素晴らしいことなのですが、それでいいのかなと思うのです。
善意ある人の頑張りによってのみ支えられるのでなく、システムとしても整えていく必要があるのではないでしょうか。医療そのものは皆保険制度であり、どこでも受ける側の値段は一律であるということからも言えると思います。システムにすることで医療界の自浄作用も発揮しやすくなり、今回のような事件が起こったとしても、頑張っている医師まで悪質な医師と同じような目で見られることを防いでいけると思います。患者や日本の医療のために邁進している医師を守るという意味でも、そういうシステムは必要ではないかと考えています。