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睡眠のリテラシー52
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高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員
お酒は百薬の長と言われます。たしかに仕事がうまくいった時やめでたい時に飲むお酒は格別です。それに対して、むしゃくしゃした時にお酒を飲むと、大抵ろくなことがありません。飲酒の場というのはとても大切です。
飲酒する状況だけではなく、その量にも気を配らなければなりません。楽しい席であっても適量を超えたら、楽しくない結末を迎えます。適当な量は男性では1日あたり日本酒で言えば2合まで、女性では1合までと言われています。
厚生労働省の調査によれば、この量を超えて飲む割合は男性で32%、女性で45%となっています。また、飲酒の頻度から見ると、男性で30%、女性7%は毎日飲酒するそうです。手軽に入手できるというのはアルコール飲料の良い所でもあり、そうでもない所かもしれません。
飲酒する人であれば、飲み過ぎてしまったことがない人はいないでしょう。そうなる原因は多々あるでしょうけれども、仕事に関係したものと言えば、職場のストレスと労働時間が挙げられます。
この労働時間と飲酒との関連を詳しく調べた論文がフィンランドより最近発表されました。この論文では両者の関連を検討した過去のデータを統計的に解析しました。取り上げた研究の数は延べ81であり、対象者の総数は43万人を超えました。
労働時間は週35時間未満、35〜40時間、41〜48時間、49〜54時間、55時間以上に分けました。飲酒については男性では週に21杯を超えて飲む場合を、女性では週に14杯を超えて飲む場合をそれぞれ「問題のある飲み方」とみなしました。これらの基準は先に示した飲酒の基準に沿っています。
週55時間以上働く群では週35〜40時間の通常群に比べて、問題飲酒を行う割合は約10%多いことが分かりました。さらに、対象者を追跡して調べた研究データを解析した結果、週49〜54時間群と55時間以上群では共に、将来問題飲酒となる確率が通常群より8%ほど増えることも明らかになりました。このような関連は性別や年齢などによって変わりませんでした。
長時間労働と問題飲酒との関連をどのようにみればよいでしょうか。働き過ぎると、"癒やし"がほしくなり、お酒が増えるのはあり得ます。残業で帰りが遅くなると、晩酌が結果として寝酒のようになってしまいます。良好な睡眠をとるには寝酒は避けるべきと強調されています。実際、寝る前にアルコールをとると、寝付きは早くなりますが、睡眠の質は悪くなります。もし睡眠時間も短くなったら、睡眠による疲労回復は大幅に損なわれてしまいます。
こうした状態で翌日出勤して、しっかりと働けるでしょうか。一つの作業に余計に時間がかかったり、ミスが起きたりして、結局また残業になるかもしれません。夜遅くに帰ってきて、またもやお酒に手が伸びる。このような悪循環からいかにして離れるか、大きな課題です。