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国会事故調で言う『人災』とは何か 【特別講演会のお知らせ】

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【講演タイトル】
『脂肪分解タンパク質AIMは様々な現代病の要(かなめ)である』

【講演概要】
生命現象は、音楽に例えると、シンフォニーの様に多くの旋律(element)から成り立っており、それらが統合され美しい響き(調和・恒常性)が保たれている。生活習慣病をはじめ、自己免疫病や癌など様々な病気が現代社会において急速にクローズアップされている状態は、オーケストラの随所で破綻をきたし、全体の響きが大きく損なわれてしまっている状態と同じである。したがって、そうした濁りの原因を見極め、全体の響きを矯正するためには、指揮者がオーケストラのスコアを読んで全体の響きを捕えていくように、自然現象や病気を読み解くことが求められる。すなわち、"専門家的"ではなく"全方位型"の指向性を持つべきではないか。以上が先のGDHDパーティーで述べさせていただいた個人的な考えである。
それでは、このような姿勢で現代病の病態解明と新しい治療法の開発に挑むに当たり、実際どのような戦略をもってあたるのか?ここで、音楽にまつわる例をもう一つ挙げさせていただきたい。
「こんなに性格の違う楽章をまとめてソナタと呼ぶなんて暴挙だ!しかし素晴らしく美しい!!」
これは有名な葬送行進曲を第3楽章においた、ショパンのピアノソナタ第2番についてシューマンが語った評である。この曲は最初、曲想が楽章単位で完結しており、それぞれの連携が散漫でつかみどころのない印象を与えるかもしれない。しかし聴き終えた後には、曲全体が亀裂のないひとつの巨大な塊として、聴いた者に強烈な印象を残す。それを可能にするのは、一見わかりにくいが、共通する音型として常に"短三度の動機"が使われており、それが無関係に見える楽章を根底で結び付けているためである。その動機を理解し然るべく演奏することにより、初めてこの曲にまとまった印象を与えることが出来る。私たちの目標は、まさに現代病における"短三度の動機"の探求とその正しい扱い方の開発である。一見独立して見える多彩な疾患群の背後に存在し、それぞれを結びつける共通のもの-東洋医学における"ツボ"のような分子-を見つけ出し、そのツボの押し方を探る。そうすることによって、濁った響き(病気の状態)から再度美しい響き(正常状態)に戻すことができる(すなわち様々な現代病全体の制御を行える)と信じて研究を行っている。
私たちはそのようなツボの一つとしてAIM(apoptosis inhibitor of macrophage)という我々が血液中に持っている、脂肪を分解するタンパク質を見出した。本講演では、AIMが様々な現代病全体を結ぶ要(かなめ)=ツボであるとの確信に至った研究の過程と、そのツボの押し方の開発の状況をお話ししたい。

【宮崎徹先生略歴】
東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター 分子病態医科学部門教授。
1986年東京大学医学部医学科卒業後、医学部附属病院第三内科(高久史麿教授)に入局。その後、熊本大学大学院で山村研一教授に師事し、トランスジェニックマウスを用いた自己免疫疾患の研究を行う。
1992年より、パスツール大学/IGBMC (フランス・ストラスブール)のD. Mathis博士研究室で研究員、1995年よりバーゼル免疫学研究所(スイス)のメンバーとして研究室を持ち、2000年よりテキサス大学(アメリカ・ダラス)免疫学准教授。
2006年より現職。AIMの研究を通じて様々な現代病を統一的に理解し、新しい診断・治療法を開発することを目指している。音楽が趣味で、2006年教室開講記念として、世界的なピアニストのKrystian Zimerman氏を招き、安田講堂で"音楽と科学"について討論会を催した。


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