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再生医療への期待は過大 まだ立体構造を作れない

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iPS集中は正しい?

 ところで、再生医療の研究では、iPS細胞を樹立しノーベル賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授を中心に、「文部科学省iPS細胞等研究ネットワーク」という、国内数百人に上る大がかりな研究推進体制がつくられているのをご存じでしょうか? ネットワークに参加する研究機関・研究者は、個々の研究成果や知的財産を「研究者間で共有」することによって、それぞれの研究を加速させるのが狙いです。

 また、文科省と厚生労働省、経済産業省が研究開発の長期支援と橋渡しを目的としたプロジェクト「再生医療の実現化ハイウェイ構想」も進行中です。いずれも「オールジャパンで再生医療研究を推進!」が掛け声になっています。

 STAP細胞の発表を理研が焦った背景としても、iPS細胞への研究費の集中が伝えられました。

 国民が、この税金の支出を支持しているのは、近い将来に再生医療が広く実用化されると期待しているから、という可能性はないでしょうか?

 しかし見てきたように、近い将来、一般的になるとは考えづらいものがあります。

 この流れについて、血液がんのがん幹細胞研究で世界をリードする九州大学大学院医学研究院・病態修復内科の赤司浩一教授は、オールUSAで行われた人類初の月への有人宇宙飛行というアポロ計画になぞらえて、こう言います。「たとえるなら、今の再生医療は、ロケット燃料とエンジン開発のめどは立ったが、月までの宇宙空間については未解明のことだらけ、というところ。分かっていないことだらけで、まだ応用に踏み込む段階にないと映ります。もちろん、将来はオールジャパンで力を合わせないといけない日も来るでしょうが」

 また、全世界共同で進められている国際がんゲノムコンソーシアムに参加している東京大学医科学研究所の宮野悟教授も「国は再生医療に前のめりに予算を付けていますけれども、国民が期待している成果は出ているのか、本来の目的に沿った研究費の使い方はされているのか、検証が必要だろうと思います」と話しています。

iPS細胞その他の課題

 iPS細胞を再生医療に応用する際の課題として、これまでいの一番に挙げられていたのは、移植後のがん化をどう防ぐかという安全性でした。
 iPS細胞は、あらゆる細胞に分化できる多分化能と、無限に増殖できる自己複製能が特徴です。がん化リスクをゼロにするのは難しいとされます。しかし、iPS細胞を樹立する時に導入する遺伝子のうち、細胞増殖を加速するc-Mycを避けるなど、技術的改良がかなり進んでいます。
 他にも、実用化に不可欠なiPS細胞の量産化や作製コストをいかに下げるかといった課題があります。


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