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認知症を知る17 認知症にやさしい社会は誰もが暮らしやすい

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。


認知症」の負のイメージ強過ぎ チャンスも可能性も奪っている。

――様々な立場の人々が職種の枠を超えて市民として集うという点が、これまでの運動とは一線を画すところかなと感じます。

 医療や介護の世界でも「認知症は特殊」「素人に対応は難しい」という見方が一般的と思います。確かに、障害に対する対応という物理的な部分で経験や知識が不可欠ですけれど、今は、あまりに「認知症」という言葉の持つマイナスイメージが大き過ぎて、やろうと思えばできることでさえ本人や家族にやる気を起こさせなくなっています。結局は家族も含めて認知症の方の生活が必要以上に窮屈になって、チャンスも可能性も奪ってしまっています。
 認知症といってもその人のごく一面に過ぎません。「認知症」という言葉を外して個性も尊厳もある一人の人間として見るという啓発は、僕たち一般市民が主体となってやっていく必要があると思います。

――医療や介護に頼り切るのではなくて、自分たちの問題として腹を据えて考えていくと。

 父の時の僕もそうだったように、家族が認知症になるとショックが大きく、「どこかに認知症を一瞬で解決してくれる魔法があるはずだ」と探し回りますが、そんなものはどこにもありません。最終的に考え行動しないといけないのは家族自身なのに、医療や介護のプロに求めることを基本スタンスにしていると、「やってくれない」という気持ちばかり出てきて、負の連鎖になります。本人や周囲が賢くならないといけません。

――私の兵庫の実家にいる母もアルツハイマー型の認知症が進行中で心配です。同居での介護に頭が下がります。

 僕はこの3年ぐらい、毎日、母をお風呂に入れています。様子や体調が一番よく分かる大事な時間です。そのことを先日デイサービスの職員の方に話したら「私たちはご家族が(介護で)つぶれないためにやっているつもりなのに」と、手抜きを勧められました。でも僕は、つぶれないようにやっているし、もがき苦しんでいる母が気持ちよくなってくれる姿を見ている方がよっぽど楽な感じがしています。
 「親孝行の鑑ですね」と言われることがありますけれど、それも違います。あと20年も経ったら僕も妻も介護される側に回るんです。今の社会のまま介護される側に行くのは、ちょっとどうかと思います。その時に自分らしく生きたいので、今活動しています。

――そうなんですね。

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