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レジスチンは心不全リスクを上げる

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 内臓脂肪から分泌される生理活性物質の中の、レジスチンとアディポネクチンについて、心不全との関連を調べたところ、血中のレジスチン濃度が高いことは心不全リスクを高めることが分かりました。

Resistin, Adiponectin and Risk of Heart Failure: the Framingham Offspring Study
David S. Frankel, MD, Ramachandran S. Vasan, MD, Ralph B. D'Agostino, Sr., PhD, Emelia J. Benjamin, MD, ScM, Daniel Levy, MD, Thomas J. Wang, MD, and James B. Meigs, MD, MPH
J Am Coll Cardiol. 2009 Mar 3;53(9):754-62. doi: 10.1016/j.jacc.2008.07.073. Epub 2008 Dec 26
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川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 心不全は、罹患率が高まっている一般的な健康問題である。治療の進歩にもかかわらず、心不全は致死率の高い疾病のままとなっている。心不全発現の危険因子識別は、予防戦略の開発を助けるかもしれない。年齢・冠動脈性心疾患(CHD)・高血圧・心臓弁膜症・左室肥大・糖尿病・肥満を含めて、数多くの危険因子が立証されてきている。最近の調査は、体重超過および程度の低い肥満と心不全発症増加との関連を強調してきている。インスリン抵抗性は、これらの関連のすべてではないが、いくらかを説明しそうである。

 インスリン抵抗性と肥満が心不全リスクを助長する仕組みはよく分からないままである。提唱されている仕組みは、C反応性蛋白質・プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1・腫瘍壊死因子α・インターロイキン6・アンギオテンシノーゲン・血管内皮増殖・血清アミロイドA3のような血中炎症伝達物質濃度が増すことでの全身性炎症状態を含んでいる。腫瘍壊死因子α・インターロイキン6・C反応性蛋白質の血中濃度が増すことは、心不全発症リスク増大と関連づけられてきている。

 脂肪細胞が分泌するレジスチンやアディポネクチンを含むいくつかの新たな蛋白質(アディポカインまたはアディポサイトカインと呼称)が、炎症誘発および抗炎症特質を有し、血漿サイトカイン濃度と相互に関係がある。他の炎症マーカーのように、レジスチン濃度がより高いことをCHDと関連づけてきている研究もあるし、そうではない研究もある。慢性心不全患者での一つの横断的分析が、レジスチン濃度がより高いことは病気の重症度を増すことと相互に関連があり、さらに有害な心臓病転帰を予測することを見出した。しかしながら、レジスチンは、地域社会の中においては心不全の新たな発症予測因子としてまだ調査されていない。

 アディポネクチンの濃度は、インスリン抵抗性や肥満においては低減され、実験的モデルで説明されたように、アディポネクチンが血中炎症伝達物質の有害作用を和らげるかもしれないことを示す負の相関となる。アディポネクチン濃度が低いことは、CHDリスク増加と関連づけられてきており、無定見に心不全発症と関係づけられてきている。慢性心不全患者においては、アディポネクチンが低いことは逆説的に死亡率低下と関連づけられてきている。それ故に、心不全発現におけるアディポネクチンの役割も不明確なままとなっている。

 このような背景を念頭に、本研究では、血中レジスチン濃度およびアディポネクチン濃度と心不全発現との関連を地域密着型標本において調査した。レジスチン濃度が高く、アディポネクチン濃度が低いことが、心不全リスク増大に関連あるだろうとの仮説を立てた。さらに、この関連は、潜在的媒介機構を構成する肥満・インスリン抵抗性・炎症の変化で補正を加えると弱められるだろうと仮定した。

●方法

(1)対象者
 1999~2001年に実施されたFramingham Offspring Study(*1)7回目検査を本研究のベースライン時検査とし、3,539人が病歴調査・健康診断・12誘導心電図・空腹時血液サンプル分析を受けた。ベースライン時に心不全があった32人を除外した。アディポネクチン濃度測定は、7回目検査期間途中で始めたことにより、アディポネクチン濃度データのない768人をさらに除外し、本分析には2,739人が残った。

(2)共変数定義およびラボ検査法
1  身長・体重・腹囲は標準的方法により計測した。BMIは、キログラム体重÷メートル身長の二乗で算出した。
2  血圧は、少なくとも5分座った後に2回医師により計測された平均値を取った。
3  糖尿病は、空腹時血糖値125mm/dL超、または血糖降下剤治療を受けていることと定義した。
4  冠動脈性心疾患(CHD)は、標準的Framingham Heart Study基準により定義し、狭心症・冠動脈不全・致死的または非致死的心筋梗塞のいずれかでの新たな発症とした。
5  心臓弁膜症は、収縮期雑音が6段階分類法の3/6以上、または拡張期雑音があることと定義した。
6  左室肥大は、心電図検査データを使い決定した。
7  検査前年に日常的に喫煙していたと報告した対象者は、現在喫煙と見なした。
8  対象者は、血液検体提供のため1晩絶食した。血液標本は分析まで-80℃で凍結保存された。
9  クレアチニン値・血糖値・インスリン値・脂質値を測定した。
10 インスリン抵抗性は、HOMA-IR値を算出した。
11 C反応性蛋白は、免疫沈降法により測定した。
12 糸球体濾過率は、計算式により算出した。
13 尿中アルブミン/クレアチニン比は、6回目検査時に評価された。
14 血漿インターロイキン6・腫瘍壊死因子α・レジスチン・総アディポネクチンは、酵素結合免疫吸着測定法で測定した。
15 血漿B型ナトリウム利尿ペプチドは、7回目検査時には測定しなかったので、6回目の測定値を用いた。

(3)心不全の定義
 ベースライン時から追跡調査期間終了の2005年12月までに起こったすべての新たな心不全が、Framingham基準に従い3人の医師からなる委員会で判定された。大基準が同時に二つ存在するか、大基準一つと小基準二つが同時に存在し、代わりとなる説明が症状や兆候に対して存在しないことが、心不全診断のために求められた。大基準および小基準は以下の通りである。
1 大基準
発作性夜間呼吸困難・起座呼吸・頸静脈圧上昇・肝頸静脈逆流・ラ音・X線検査からの心肥大エビデンス・急性肺水腫・第3心音・中心静脈圧16cm水柱超・疑わしい心不全治療の最初5日間での体重減少が4.5kg超
2 小基準
両側くるぶし浮腫・夜間の咳・努力性呼吸困難・肝肥大・胸水・心拍数120回超/分

新たに58人の心不全発症があり、54人は入院、4人は入院しなかったが医師の診察に基づき心不全と診断された。

(4)統計分析
 対象者をレジスチンとアディポネクチン分布で3群に分類した。追跡調査期間中の心不全発症数が少ないことを考慮すると、性別に特化した分析では統計的検出力が弱いため、主要な分析は男女混合で実施した。

平均危険因子水準あるいはアディポカイン層別による割合の差異評価のため分散分析を行い、危険因子間の相関評価のため相関係数を算出した。歪度を減らすため、HOMA-IR・C反応性蛋白・B型ナトリウム利尿ペプチド・尿中アルブミン/クレアチニン比はログ変換した。それぞれのアディポカイン層別に心不全にならない生存率をカプランマイヤー法による生存曲線で描き、生存率差異を対数順位検定により検査した。

 レジスチン濃度が高く、アディポネクチン濃度が低いことが心不全リスクを増大させるとの仮説を実証するため、心不全危険因子の交絡因子で補正を加え、比例ハザード回帰モデルを組み立てた。

 アディポカインの3分類群にわたる心不全発症を検査するモデルでは、階層的に補正を加えた。
1 モデル1  年齢・性別
2 モデル2 年齢・性別・収縮期血圧・高血圧治療・糖尿病・喫煙・総コレステロール値/HDL-C値比率・CHD傾向・心臓弁膜症・左室肥大・推定糸球体濾過率
3 モデル3 モデル2の変数に、BMI・HOMA-IR・C反応性蛋白・B型ナトリウム利尿ペプチドを個別に、そして一緒に加えた。

 さらに、アディポカインと心不全の容量反応分析や、レジスチンおよびアディポネクチンの標準偏差1増加ごとの関連性分析も実施した。

(5)補助分析
 ベースライン時のCHDや追跡調査期間での新たなCHD発症は、新たな心不全発症の強力な危険因子となることが予測されたので、ベースライン時CHDおよび追跡調査期間中の新たなCHD発症を除外した。追跡調査期間中の心不全発症数が58件であったことを考慮すると、15の予測因子変数は多過ぎるため、Framinghamリスクスコア要素を代わりに用い、年齢・収縮期血圧・高血圧治療・糖尿病・喫煙・総コレステロール値・HDL-C値による分析を実施した。インターロイキン6と腫瘍壊死因子αは心不全と関連づけられてきている炎症マーカーなので、それぞれをC反応性蛋白の代わりに用いた。

 糸球体濾過率を用いての腎機能説明に加え、尿中アルブミン/クレアチニン比でも補正を加えたが、4年前に計測されたもののためデータは2,241人分しかなく、結果は慎重に解釈されるべきものとなった。異常な脂肪細胞機能への影響がより大きく、標準体重・超過体重・やや肥満の人ではCVDを予測することが示されてきているため、BMIの代わりに腹囲を用いた分析も実施した。

 最終的に、アディポカイン値とCHDの関連評価を、CHD傾向対象者を除外し、モデル2で実施した。

●結果

(1)ベースライン時特性
 心不全危険因子傾向は、レジスチン濃度が高いことで増大し、アディポネクチン濃度が高いことで減少した。BMI・腹囲・HOMA-IR・C反応性蛋白は、レジスチン濃度とは正方向に相互関係があり、アディポネクチン濃度とは負の方向に相互関係があった。レジスチン濃度とアディポネクチン濃度は、お互いに負の方向に相互関連があった。

(2)アディポカインと心不全リスク
 平均追跡調査期間6年で新たな心不全発症は58人となり、蓄積発生率は2.12%となった。心不全にならずに生存する率は、レジスチン値が低い層と比較すると、高い層で減少した(P<0.0001)。レジスチン層別間での心不全ハザード比は、年齢と性別で補正したモデル1では、レジスチン濃度の高い群にいくほど上がった。また、モデル2および3においても、その関係は変わらなかった。
1 モデル1ハザード比 低レジスチン濃度群1.00比較基準 中レジスチン濃度群2.22(信頼区間95% 0.87~5.69)、高レジスチン濃度群3.91(信頼区間95% 1.63~9.35)、P=0.0008
2 モデル2ハザード比 低レジスチン濃度群1.00比較基準 中レジスチン濃度群2.89(信頼区間95% 1.05~7.92)、高レジスチン濃度群4.01(信頼区間95% 1.52~10.57)、P=0.004
3 モデル3ハザード比 低レジスチン濃度群1.00比較基準 中レジスチン濃度群2.62(信頼区間95% 0.95~7.27)、高レジスチン濃度群3.74(信頼区間95% 1.40~9.99)、P=0.007

 レジスチンの標準偏差1増加(7.45ng/ml)に伴うハザード比は、以下の通りとなった。
1 モデル1ハザード比 1.45(信頼区間95% 1.16~1.82)
2 モデル2ハザード比 1.36(信頼区間95% 1.09~1.69)
3 モデル3ハザード比 1.26(信頼区間95% 0.99~1.60)

 アディポネクチンについては、どのモデルにおいても心不全発生との関連はなかった。
1 モデル1ハザード比 低アディポネクチン濃度群1.00比較基準 中アディポネクチン濃度群0.84(信頼区間95% 0.45~1.57)、高アディポネクチン濃度群0.64(信頼区間95% 0.32~1.27)、P=0.2
2 モデル2ハザード比 低アディポネクチン濃度群1.00比較基準 中アディポネクチン濃度群0.90(信頼区間95% 0.47~1.70)、高アディポネクチン濃度群0.79(信頼区間95% 0.36~1.76)、P=0.6
3 モデル3ハザード比 低アディポネクチン濃度群1.00比較基準 中アディポネクチン濃度群0.87(信頼区間95% 0.44~1.73)、高アディポネクチン濃度群0.97(信頼区間95% 0.42~2.22)、P=0.9

(3)補助分析
 すべての補助分析モデルにおいても、レジスチンは常に心不全リスク増大と関連があり、アディポネクチンは関連がなかった。

 レジスチンもアディポネクチンも、CHD発症との関連はなかった。モデル2において比較をした場合以下の通りとなった。
1 レジスチン中濃度群ハザード比 0.76(信頼区間95% 0.44~1.30)
2 レジスチン高濃度群ハザード比 0.82(信頼区間95% 0.49~1.38)P=0.5
3 アディポネクチン中濃度群ハザード比 0.73(信頼区間95% 0.43~1.22)
4 アディポネクチン高濃度群ハザード比 0.70(信頼区間95% 0.37~1.32)P=0.2

●考察

 6年間の追跡調査期間において、血中レジスチン濃度がより高いことは、新たな心不全発症リスクが高まることと強い関連があると分かった。アディポネクチンについては、濃度の高低にかかわらず、新たな心不全発症とは関連がなかった。レジスチンが心不全を助長する特定の仕組みは明らかにされるべきものとして残るが、本研究結果は、まだ発見されていない新たな心不全助長の仕組みを示唆するものである。

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