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血圧高めの人も慢性腎臓病にご注意を

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 韓国で、中年の一般住民男女を対象に、血圧と慢性腎臓病(CKD)との関連を調べたところ、血圧高めの段階からリスクが高くなること、血圧管理が不十分だと糸球体濾過量(GFR)減少のリスクが高まると分かりました。

Relationship between prehypertension and chronic kidney disease in middle-aged people in Korea: the Korean genome and epidemiology study
Min-Ju Kim, Nam-Kyoo Lim and Hyun-Young Park
BMC Public Health 2012, 12:960 doi:10.1186/1471-2458-12-960
Published: 9 November 2012

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 慢性腎臓病(CKD)は、総死亡率、末期腎不全・心血管疾患(CVD)・他に糖尿病のような慢性疾患への進行と関連がある。米国におけるCKDの罹患率は1988~1994年の10.0%から1999~2004年の13.1%へと増加している。韓国における集団ベースの横断的疫学研究では、CKD罹患率は13.7%、腎機能の低下は5.0%であった。Kidney Disease Outcomes Quality Initiative(KDOQI)(*1)のガイドライン(米国腎臓財団提唱の腎臓病予後改善対策のガイドライン)によると、CKDは最低3カ月間の腎臓損傷マーカー(および/または)糸球体濾過量(GFR)が60mL/min/1.73m²未満と定義され、さらに、GFRは通常血清クレアチニン値のみによって推定されるか、血清クレアチニン・年齢・性別・人種を考慮に入れた予測方程式によって推定される。それ故に、推定糸球体濾過量(eGFR)を使うことが通常CKD患者のスクリーニングに勧められている。さらには、高血圧や糖尿病の高リスク患者管理が特に重要となっている。

 血圧が高くなることはCKD進行と密接な関連があり、血圧を低下させることはGFR低下を減速させることになるかもしれない。数多くの研究が、高血圧はCKDに含まれると報告しており、腎機能改善における血圧管理の重要性を強調している。全米腎臓基金の腎臓早期評価プログラム(KEEP)および米国の全国健康栄養調査(NHANES)のデータともに高血圧と腎臓病の強い関連を示している。高血圧の予防・発見・診断・治療に関する米国合同委員会の第7次報告(JCN-7)は、CKD患者では血圧を130/80mmHgに管理することを提案している。最近、シンガポールからの集団ベースの横断的研究は、血圧はCKDと独立した関連があり、血圧をきちんと管理しないと、治療を受け管理された高血圧よりも腎臓損傷に対しより有意に強い関係を有することになると示していた。日本のある研究者は、高血圧のない日本人において110/75mmHgを超える血圧が、eGFRではなく、アルブミン尿と有意に関連あることを発見した。

 いくつかの研究においては、高血圧がCKDの有意な危険因子であると示したが、高血圧前段階とCKDとの関連はほとんど知られていない。本研究においては、中年の韓国人を対象に高血圧前段階とCKDとの関係を調査した。腎機能悪化に対する血圧管理の効果を測定するため、前向きに2年間の追跡調査期間中における血圧変化によるeGFR低下を評価した。

●方法

(1)対象者
 Korean Genome and Epidemiology Study(韓国ゲノム疫学研究)(*2)に登録された40歳以上の10,038人中、40~69歳までの10,013人がベースライン時調査対象に選ばれ、血清クレアチニン値不備6人、データ不備496人、CKDステージ5(eGFRが15mL/min/1.73m²未満)2人を除外し、9,509人がベースライン時調査に参加した。2年後の追跡調査時には、死亡者92人および追跡調査に加わらなかった814人を除く、8,603人が参加した。すべてのデータが揃った8,149人が追跡調査に選ばれたが、血清クレアチニン値不備2,108人、血圧値不備2人を排除することとなり、本研究に残ったのは6,039人となった。この中から、ベースライン時調査で高血圧前段階だった2,367人が選ばれ、2年間の追跡調査期間中の血圧変化が測定され、血圧管理群と血圧管理不十分群に分類された。

(2)血圧測定
 血圧測定は、5分間の安静後、水銀血圧計を用い、30秒間隔をおいて両腕から測定された。座位における2回測定の収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)それぞれの平均値が記録された。

 血圧は、JCN-7区分により分類され、通常血圧は収縮期血圧120mmHg未満で拡張期血圧80mmHg未満、高血圧前段階は収縮期血圧120~139mmHgで拡張期血圧80~89mmHg、高血圧は収縮期血圧140mmHg以上で拡張期血圧90mmHg以上あるいは降圧薬を服用している場合とした。

 血圧管理群とは、通常血圧を維持している対象者、血圧管理不十分群とは2年後の追跡調査時に高血圧前段階または高血圧である対象者とした。

(3)他の測定値
 年齢・性別・喫煙・飲酒を含む人口統計学的、医療的、行動的特徴が標準的アンケートから入手された。体重は最も近い0.1kg単位まで、身長は最も近い0.1cm単位まで計測され、BMIはキログラム体重÷メートル身長の二乗で算出した。腹囲は、立位での肋骨と腸骨稜中間点で計測された。

 8~14時間絶食後の血液サンプルが採取され、空腹時血糖値(FPG)・総コレステロール値(TC)・トリグリセリド値(TG)・高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)およびクレアチニン値が測定された。低密度リポ蛋白コレステロール(LDL-C)は、Friedwald計算式(<LDL-C>=<TC>-<HDL-C>-<TG/5>)で推定した。タンパク尿は尿試験紙法で1+以上とした。

(4)CKDおよび糖尿病の定義
 KDOQIのガイドラインによると、CKDは最低3カ月間の腎臓損傷マーカー(および/または)糸球体濾過量(GFR)が60mL/min/1.73m²未満と定義されている。本研究においては、CKDをタンパク尿がある、またはeGFRが60mL/min/1.73m²未満と定義した。CKDのステージは以下のように分類した。
1 蛋白尿1+以上でeGFRが90mL/min/1.73m²以上
2 蛋白尿1+以上でeGFRが60~89mL/min/1.73m²
3 eGFRが30~59mL/min/1.73m²
4 eGFRが15~29mL/min/1.73m²

 腎機能の変化は、ベースライン時および2年後追跡調査時のeGFR値を用い評価した。ベースライン時と追跡調査時間でeGFR値が下がった場合にeGFR値低下と表示した。

 糖尿病は、2010年の全米糖尿病学会の分類に基づき、FPGが126mg/dl、または2時間後血糖値が200 mg/dl、またはヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上、または経口血糖降下薬を服用している場合とした。

(5)統計分析
 血圧とCKDとの関連を確認するために多変量ロジスティック回帰モデルを用い分析した。2年後の追跡調査後に、血圧変化によるeGFR値低下のオッズ比を多変量ロジスティック回帰分析により算出した。

●結果

(1)ベースライン時特性
 9,509人のうち、正常血圧が3,792人39.9%、高血圧前段階が3,873人40.7%、高血圧が1,844人19.4%であった。被験者の平均年齢は52歳で、男性が47.9%、平均BMIは24.6だった。血圧値が高い場合に、BMI・腹囲・FPG・TC・LDL-C・TG値が高くなっていた。高血圧の場合、より糖尿病傾向があり、正常血圧群では群中7.0%であったのに対して、高血圧前段階群では11.5%、高血圧群では19.3%となった。平均eGFR値は74.0(標準偏差±14.0)mL/min/1.73m²となり、高血圧群が最も低かった。eGFR値が60mL/min/1.73m²未満だったのは、正常血圧群で群中5.6%、高血圧前段階群で11.4%、高血圧群で23.3%となった。全体の2.3%にあたる217人が、タンパク尿1+以上であり、正常血圧群よりも高血圧群により多くの対象者が見られた。

(2)CKD罹患率
 以下のような結果となった。
1 正常血圧群 3,792人
①CKD全体   251人(群中6.6%)
②ステージ1~2  39人(CKD中15.5%)
③ステージ3   212人(CKD中84.5%)
④ステージ4    0人(CKD中0.0%)
2 高血圧前段階群 3,873人
①CKD全体   516人(群中13.3%)
②ステージ1~2  75人(CKD中14.5%)
③ステージ3   439人(CKD中85.1%)
④ステージ4    2人(CKD中0.4%)
3 高血圧群 1,844人
①CKD全体   490人(群中26.6%)
②ステージ1~2  60人(CKD中12.2%)
③ステージ3   422人(CKD中86.1%)
④ステージ4    8人(CKD中1.6%)

 性別差で見ると、男性の3.5%がCKDであったのに対して、女性では22.2%がCKDとなっており、すべての血圧群において女性の方で罹患率が高くなっていた。

(3)CKDの多変量ロジスティック回帰分析結果
 年齢・性別・BMI・FPG・TC・TG・HDL-C・腹囲・喫煙習慣・飲酒習慣で補正を加えた後の分析において、高血圧前段階群および高血圧群で有意にCKDとの関連が以下のように見られた。
1 正常血圧群(比較基準)
2 高血圧前段階群 オッズ比1.59(信頼区間 95% 1.29~1.95 P<0.001)
3 高血圧群    オッズ比2.27(信頼区間 95% 1.80~2.86 P<0.001)

(4)追跡調査期間のeGFR値オッズ比
 追跡調査を受けた6,039人中、2年後追跡調査時に正常血圧だった血圧管理群が3,133人、高血圧前段階または高血圧だった血圧管理不十分群が2,906人となった。血圧管理群では52.5%にあたる1,644人、血圧管理不十分群では62.9%にあたる1,827人がeGFR値低下となった。多変量ロジスティック回帰分析では、血圧管理群を比較基準として、血圧管理不十分群ではオッズ比1.22(信頼区間 95% 1.08~1.38 P<0.01)となった。

 高血圧前段階群にいた対象者2,367人中、追跡調査時に857人は血圧管理群、1,510人は血圧管理不十分群となり、eGFR値低下傾向が、血圧管理群で57.8%であったのに対して、血圧管理不十分群では66.0%、オッズ比では1.37(信頼区間 95% 1.13~1.67 P<0.01)となり、血圧管理群と比較して血圧管理不十分群で有意に高リスクとなることが分かった。

●考察

 本研究の目的は、韓国人の中年における血圧とCKDとの関係を調査することであった。結果からは、高血圧同様に、高血圧前段階でCKDとの間に強い独立した関連が見出された。また、本研究のデータは、2年後追跡調査時におけるeGFR値の低下リスクは、血圧管理が不十分だった場合に有意に高くなることを示した。リスクは、高血圧前段階から始まっているということである。

 1999~2004年米国の全国健康栄養調査(NHANES)の結果は、米国ではステージ1~4までのCKD罹患率は13.1%であることを示している。オーストラリア人の25歳以上の成人では、約16%に腎臓損傷指標が少なくとも一つあるとされている。CKD罹患率は民族によって異なり、アジアの人々は比較的高い罹患率になっている。日本では、成人の約19%がステージ3~5のCKDと推定されており、北京では12.9%とされている。さらに、1999~2006年のNHANESは、米国では高血圧前段階の17.3%、診断未確定高血圧の22.0%が、eGFR値やアルブミン尿で定義されるCKDだとしている。

 高血圧同様に高血圧前段階が、中年韓国人の中ではCKDと有意に関連があり、腎機能の悪化予防のために、高血圧前段階の人が積極的に血圧を管理する必要があることを示している。本研究は、積極的な血圧管理がCKD予防において重要な役割を果たすことを示すものである。


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