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健康診断は罹患率や死亡率を下げない

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健康診断受診群と非受診群で比較をしたところ、健診によって死亡リスクが低くなることはなく、直接的に罹患率を低下させることにもつながらないとの結果が出ました。

General health checks in adults for reducing morbidity and mortality from disease
Lasse T Krogsbøll*, Karsten Juhl Jørgensen, Christian Grønhøj Larsen, Peter C Gøtzsche
Published Online: 17 OCT 2012
Assessed as up-to-date: 4 JUL 2012
DOI: 10.1002/14651858.CD009009.pub2

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 一般的な健康診断は、具合が悪いと感じていない人に数多くの検査を行い、病気の早期発見、病気の発症予防、安心提供することを目的としている。健康診断が医療の一般的要素となっている国もある。多くの人にとって、健康診断は直感的には意味があるが、個々の病気のためのスクリーニング・プログラムで恩恵を受けることは思っているより少なく、害の方が大きいかもしれない。

健康診断の害として可能性があるのは、症状や死をもたらすわけではない健康状態の診断や治療が増えることにある。必要ない治療リスクを背負うことになるだろう。

本研究は、血圧や血清コレステロール値のような代用的な結果ではなく、罹患率や死亡率といった患者に関連する結果に重点を置き、一般的な健康診断が害悪よりも効用をもたらすのかどうかを評価した。

●方法

 2012年7月までのCochrane Library、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Cochrane Effective Practice and Organization of Care (EPOC)Trials Register、MEDLINE、Healthstar、CINAHL、Clinical Trials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform (ICTRP)を検索した。2名がタイトルと要約でふるい分けを行い、論文の適格性審査を行うと同時に、参考文献リストに目を通した。1名がWeb of Knowledgeにより論文の引用傾向調査を行うと同時に、試験実施者(研究者)たちに追加研究についての質問を行った。

 任意抽出の成人における健康診断受診群と健康診断非受診群を比較するために、無作為試験を対象とした。老人病検査については対象外とした。健康診断の定義は、一つ以上の器官系における一つ以上の病気や危険因子に関する一般集団対象のスクリーニングとした。

 2名がそれぞれにデータ抽出を行い、試験におけるバイアスのリスク評価を行った。必要に応じて、追加結果や試験詳細について著者たちに連絡をとった。死亡結果については、変量効果モデルによるメタ解析を行い、他の結果については質的統合を行った。

●結果

 一般的健康診断を提供された成人グループと提供されなかったグループの比較をしている16の無作為試験を識別した。結果は14試験から得ることができ、対象者は182,880人となった。9試験において総死亡リスクが研究されており、155,899人中11,940人の死亡が確認された。追跡期間の中央値は9年で、リスク比は0.99(信頼区間95% 0.95~1.03)となった。8試験において全体で152,435に対して4,567人いた心臓血管疾患死亡率データを挙げており、リスク比は1.03(信頼区間 95% 0.91~1.17)、8試験において全体で139,290に対して3,663人いたがん死亡率データを挙げており、リスク比は1.01(信頼区間 95% 0.92~1.12)となった。健康診断の効果は、総死亡リスクにおいても、心臓血管疾患やがんによる死亡リスクにおいても存在しなかった。

 病気に対するリスクへの効果は発見できなかったが、1試験において、スクリーニングによって高血圧と高コレステロール血症の発生増加が見られたとしていた。また、自己申告による慢性病の発生が増加したとする試験も一つあった。さらに、1試験において、患者ごとの新診断総数を報告しており、対照群と比較して6年間で20%増加したとしている。新しく出された処方箋総数を比較した研究はなかったが、4試験中2試験において、高血圧薬の使用者数増加を発見していた。4試験中2研究で、健康診断はいくらか人をより健康に感じさせるとしているが、試験がブラインド状態で実施されたわけではないので、報告バイアス(*1)によるものである可能性があり、この結果は信頼できない。健康診断による、入院数、障害、心痛、専門家への紹介数、医師への追加診察、欠勤に対する効果は確認できなかったが、これらの結果については研究不十分であった。スクリーニング結果が陽性となった後での追跡検査数について、あるいは手術数について報告している研究はなかった。

●考察

 健康診断が明らかな効果欠如となる一つの理由は、別件で診察した場合でも患者の病気発症リスクが高いと疑えば、家庭医の段階で既に見極められ介入されるということにあるかもしれない。さらに、病気発症リスクの高い人は、求められても一般的な健康診断は受診しないだろう。今回の研究対象となった試験のほとんどは年数が経っており、治療や危険因子が変化している中では、その結果は今日の設定には適用しにくい。

新たな診断数は増加したものの、全体としても心臓血管疾患やがんにおいても、健康診断によって罹患率や死亡率が減少したわけではなかった。追跡診断法数や短期間の心理的影響のような有害となる結果は、研究されていなかったり報告されていなかったりした。また、多くの試験が方法論的問題を抱えていた。対象人数も死亡数も多く扱い、長い追跡期間での試験にもかかわらず、心臓血管疾患やがんによる死亡が減らなかったことを考えると、一般的な健康診断が効果的であるとは言い難い。

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