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ウイルス感染症 基礎のおさらい

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。


感染は、こうして起きる

 ウイルスは、何もない所から突如出現するものではありません。ある宿主の細胞で増殖したウイルスが体外へ飛び出し、他の宿主に入り込むものです。つまり感染した宿主から出たウイルスを含む何かと、宿主候補とが接触した後に感染するということになります。
 念のためですが、新たなウイルス感染症が突如出現するのは、人が未踏の地に足を踏み入れたか、ウイルスが突然変異したかの結果。無から生まれるのとは違います。
 接触によって宿主候補に移動した後、ウイルスは宿主細胞の表面に露出している受容体にくっつき、細胞の貪食作用で細胞内に入り込みます。細胞内に入り込みやすいよう細胞膜との親和性の高い外套(エンベロープ)を持つものも少なくありません。インフルエンザウイルスもエンベロープを持ちます。
 受容体は鍵穴、そこにくっつくものはカギによく例えられ、形が合わないもの同士はくっつきません。ウイルスの形に合った受容体が細胞の側になければ感染しようもないことになります。
 このため、たとえば猫からヒトのように、ウイルスが宿主の種をまたいで感染するということは、そんなに多くありません(ウイルス限定の話。細菌などは感染します)。
 ただしインフルエンザウイルスは突然変異のスピードが速く、受容体になる構造がコロコロと変わります。これが鳥や豚由来のものがヒトに感染する理由の一つです。
 また、呼吸器の細胞だけに受容体があるような形状のうちは、患部も限られますので比較的弱毒性と言えますが、全身の細胞に受容体があるような変異をすると毒性が強まります。この変異も十分に起こり得ることが、新型インフルエンザの恐れられている本当の理由です。
 それはさておき、こう見てくると、感染を防ぐには、感染した宿主由来の「何か」と接触しないというのが最も確実で、触れてしまった場合も石鹸やアルコールなどでウイルスのエンベロープを壊して感染力を失わせるという手があることになります。
 インフルエンザの場合、「何か」というのは、咳・くしゃみ、鼻汁などで宿主の口や鼻から出てくる分泌物の飛沫が主なものです。
インフルエンザウイルスは宿主を飛び出した後1日程度、感染力を保っていると考えた方が無難です。感染力を保っている間に宿主候補の手などを伝って口や鼻、目などの粘膜へ到達すると、感染の第一関門突破です。
 感染者の分泌物が直接顔の粘膜に触れるというのは、感染者の側がエチケット(次項コラム参照)を守っている限り、満員電車でもないと起こりづらいことで、通常は宿主候補の手が媒介すると考えられます。感染予防には手洗い励行と共に、手で顔を触らないのが大切ということ、お分かりいただけるでしょうか。もし、そういうクセをお持ちでしたら、この機会に矯正を試みる手もありますね。マスクにはそれなりの防護効果を期待できますが、手洗いせずに着けたり外したりすると、顔に手が触れますので逆効果になりかねません。
 うがいに関しては、予防効果があるかハッキリしておらず、既にやっている人は続ければよいし、わざわざ始めるくらいなら不要です。ただし行なうとしても、手洗い前にやると、これまたウイルスを口の中に運び込む可能性がありますので、手洗い、うがいの順番で行なってください。
 当然のことながら、免疫力が低下すると感染しやすくなります。十分な栄養を摂取し、睡眠休息を十分とることも大事です。

ワクチン  インフルエンザの場合、一般にワクチンは接種したからといって感染を完全に防ぐものではありません。副作用もある程度の確率で発生します。ただ、感染後に重篤化するのを防ぐ効果はあると見られています。このため、何かあると命にかかわるような基礎疾患を持つ患者の命を守るため、それらの患者に医療を提供する人々と、基礎疾患を持つ人々に対して優先的に接種が行なわれることになっています。  「優先」とは言うものの、接種するかどうかは本人の判断に任されています。あなたが基礎疾患を持つ患者ならば、主治医とよく相談しましょう。
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