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男性の独り暮らしは糖尿病リスクを高める

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 ドイツでの研究で、世帯スタイルによる2型糖尿病との関連を調査したところ、独居男性ではリスクが高まることが分かりました。

Living alone is associated with an increased risk of type 2 diabetes mellitus in men but not women from the general population: the MONICA/KORA Augsburg Cohort Study.
Meisinger C, Kandler U, Ladwig KH.
Psychosom Med. 2009 Sep;71(7):784-8. Epub 2009 Jul 10.
PMID:19592514

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

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●背景

 低社会的支援、憂鬱、低職務管理など心理的要因は、冠動脈性心疾患の確立した危険因子である。冠動脈心疾患と2型糖尿病は共通の病因を有しているので、心理的要因が2型糖尿病の始まりにも関係あるのかどうかは興味深いところである。しかしながら、この問題は、これまでのところよく調査されていない。うつ症状が2型糖尿病のリスクを高めることと関連あることが、2~3の研究において示されていると言える。さらに、最近の研究では、職務ストレスと低情緒的支援を抱える人や配偶者を有さなかったり好ましくない精神衛生指標を有したりする人は、より2型糖尿病を発現しやすいということを発表している。新しい興味深い側面は、世帯状況、特に独居が2型糖尿病の発現に与える影響可能性である。家族や他の人々の存在は、ストレスを和らげ、環境的困難に積極的に立ち向かい、健康関連情報を伝える効果的な媒介となる一方で、独居している人はそのような利用可能な支援機構による防御効果を有していない。いわゆる、単身世帯がますます普通になってきていることから、独居と2型糖尿病との関連は重要な公衆衛生的意味合いを持つかもしれない。本大規模集団ベースの研究では、35~74歳で家に独居している人が婚姻状況、子ども・友人・親戚の数とは独立して2型糖尿病のリスクが高いのかどうかを前向きに調査した。

●方法

(1)対象者
 データは、1984~1995年に実施された、集団ベースの心血管疾患における傾向と決定要因モニタリング研究アウクスブルク(MONICA)から抽出された。ドイツのアウクスブルク市街地と二つの近隣郡にわたる横断的研究で、1984~1985年、1989~1990年、1994~1995年の3回実施された。全部で25~74歳の13,427人が少なくとも1回参加した。アウクスブルク地域共同保健研究(KORA)の枠組みの中で、1987~1988年、1997~1998年、2002~2003年に追跡調査アンケートを用いて2型糖尿病が評価され、病院の記録または患者を治療している医師との連絡により確認された。分析は、ベースライン時に35~74歳の10,673人に限定された。一般的な糖尿病がある人と2型糖尿病を除いた他のタイプの糖尿病の人(591人)、追跡調査の糖尿病状況に関する情報がない人(1,181人)、必要な因子データに不備のある人(97人)が除外された。したがって、本研究はベースライン時に35~74歳の男性4,424人と女性4,380人が対象となった。

(2)データ収集
 社会人口統計学的変数、喫煙習慣、運動レベル、薬剤使用、両親の糖尿病既往歴、アルコール摂取量、医療利用に関するベースライン時情報が、標準的面接の中で熟練医療スタッフにより収集された。具体的には以下の要領によった。
1 教育達成度は、修了した学校教育年数により推測した。
2 アルコール摂取量評価は、平日および週末のビール、ワイン、蒸留酒に関するアンケートデータに基づいた。
3 対象者は、喫煙経験に関し、全くない・過去にのみ喫煙、時々喫煙、日常的に喫煙のいずれかを情報提供した。
4 すべての対象者は、採血を含めた拡張版標準健康診断を受けた。
5  BMIはキログラム体重÷メートル身長の二乗で算出された。
6 高血圧は140/90mm Hgまたは高血圧で降圧剤を服用している場合と定義した。
7 脂質異常症は総コレステロール値の高密度リポタンパクコレステロール値に対する比率が5.0以上とした。
8 対象者は、余暇運動に夏季と冬季それぞれどの程度時間を費やすか、0時間/週、1時間未満/週、1~2時間/週、2時間超/週という四つの選択肢から回答した。夏季と冬季の回答が統合され、夏季も冬季も少なくとも1時間運動をしている場合を活動的という分類にした。
9 うつ症状は、あるチェックリストの下位尺度で評価された。憂鬱と疲労を、疲れやすさ・疲労・興奮性・エネルギー消失・集中困難・内的緊張・神経質・心配8項目に0~3の幅で点をつけたものを統合し、0~24に分類した。三分位の一番上にいる対象者を、憂鬱気分と判断した。

(3)臨床化学測定
 非空腹時静脈血が採取され、血清中総コレステロール分析が酵素法により実施された。高密度リポタンパクコレステロール値は、化学沈殿法により計測された。

(4)独居評価
 婚姻状況、子ども・友人・親戚の人数とは無関係に、自分の世帯に独りで住んでいる人と定義した。独居かどうかは、「私は自分の世帯に独りで住んでいる」という項目で確証され、独居群、非独居群の2群に分類された。

(5)糖尿病評価
 追跡調査アンケートでは、糖尿病診断について尋ねた。2002年12月31日までに診断されたすべての2型糖尿病を含めた。自己申告による糖尿病症例と診断日は、病院の記録または患者を治療している医師との連絡により確認された。さらに、ベースライン時に2型糖尿病ではなく追跡期間中に死亡した人の病院の記録も調査され、最後に治療にあたった医師と連絡が取られた。記録検索および医師への照会により糖尿病既往歴を確認し、ある人が糖尿病を患っていた場合は、糖尿病のタイプと診断日が確認された。このようにして、分析には臨床的に診断された2型糖尿病のみを含めた。

(6)統計分析
 分析は男女別々に実施した。分析には三つのモデルを用意し、独居群を非独居群と比較した際のハザード比を算出した。
1 モデル1(年齢とアウクスブルク調査で補正)
2 モデル2(モデル1+両親の糖尿病既往歴、高血圧、脂質異常症、喫煙、運動、アルコール摂取量、BMIで補正)
3 モデル3(モデル2+教育で補正)

●結果

 1984~2002年12月31日までの間に、平均追跡調査期間は10.9年となり、男性402人、女性271人の2型糖尿病症例が登録された。独居女性と独居男性を、非独居群の同じ性別と比較すると、以下のような特徴があった。

1 独居女性
有意に年齢が高く、より高血圧、日常的に喫煙し、医者にはあまり行かない、脂質異常症の割合がより高く、運動はより不活発、両親の糖尿病既往歴割合はより低く、アルコール摂取量はより少ない。

2 独居男性
有意により低いBMI値で、より日常的に喫煙し、アルコール摂取量はより少ない。

 2型糖尿病の粗発生率は以下の通りとなった。
1 独居男性群     127.4/10,000人年
2 非独居男性群     83.4/10,000人年
3 独居女性群      69.7/10,000人年
4 非独居女性群     53.6/10,000人年

 独居と2型糖尿病発症との間には、男性においては有意な関連があったが、女性において関連は見られなかった。三つのモデルにおけるハザード比は以下の通りであった。

1 モデル1(年齢とアウクスブルク調査で補正)
独居男性群 1.67(信頼区間 95% 1.19~2.34)
独居女性群 0.86(信頼区間 95% 0.61~1.22)

2 モデル2(モデル1+両親の糖尿病既往歴、高血圧、脂質異常症、喫煙、運動、アルコール摂取量、BMIで補正)
独居男性群 1.69(信頼区間 95% 1.19~2.37)
独居女性群 0.85(信頼区間 95% 0.57~1.24)

3 モデル3(モデル2+教育で補正)
独居男性群 1.66(信頼区間 95% 1.18~2.34)
独居女性群 0.86(信頼区間 95% 0.58~1.26)

 さらに、憂鬱気分を補正に加えたところ、ハザード比は以下のようになった。
独居男性群 1.89(信頼区間 95% 1.33~2.70)
独居女性群 0.83(信頼区間 95% 0.52~1.32)

●考察
 本研究は、独居が一般集団において女性ではなく男性中年層で2型糖尿病発症と関連あることを示した。他の生活様式関連危険因子に加え、世帯状況が、特に男性においては2型糖尿病発症率を加減する可能性がある。これらの結果が、ストレスやストレスへの反応における男女間での差によるものなのか、あるいは別の性別関連因子なのかについては、さらなる研究が必要となる。独居が人にどのような影響を与えるのかを評価し、社会的孤立や愛着スタイルが病気にかかりやすくさせる因子として存在するのかどうかを調べるためには、前向き縦断的研究が求められる。

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