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早産児は健康に気をつけて

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 スウェーデン人を対象として、出生時の妊娠期間と出生後の死亡率との関係を調べたところ、早産児は幼児期(1~5歳)だけでなく青年期(18~36歳)にも死亡率が上がると分かりました。

Gestational Age at Birth and Mortality in Young Adulthood
Casey Crump, MD, PhD, Kristina Sundquist, MD, PhD, Jan Sundquist, MD, PhD, Marilyn A. Winkleby, PhD
JAMA. 2011;306(11):1233-1240. doi:10.1001/jama.2011.1331.

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

 妊娠37週より前に生まれてしまう早産は、先進国において周産期での疾病罹患や死亡へとつながっている。早産の生後早期における影響は文書によって裏付けられているが、成人期までの、より長期的な結果についてはよく知られていない。早産傾向が高まっていることや生後早期の生存率が高まっていることから、これらの結果は、医学的にも公衆衛生的にも重要性を増している。過去30年間において、米国における早産傾向は12%以上へと上昇しており、5~9%のヨーロッパより、アフリカや南アジアでの傾向に近くなってきている。同時代に、出生前コルチコステロイド、サーファクタント補充療法、高頻度人工換気が広く用いられ、新生児医療の進歩が早期産児の生存を高めてきている。結果として、早産で生まれた多くの人が成人期まで生き延びている。成人期における結果を包括的に理解することが、より早期の予防、発見、長期の健康的後遺症治療のために必要とされている。

 これまでの研究は、早産と幼年期および少年期における死亡との関係、あるいは低体重出生と成人期における死亡との関係を調査してきている。だが我々の知る限り、出生時の妊娠期間が成人期の死亡に与える特定の影響について報告している研究はない。妊娠期間と胎児成長の作用である出生体重に的を絞った限定的なものは文書によって裏付けられてきている。妊娠期間と胎児成長の相対的影響は、その影響が異なった予防的介入を必要とするかもしれない種々の潜在的仕組みを有しているので解きほぐすことが重要である。

 本研究では、スウェーデンの国家コホート研究を行い、胎児成長とは独立した出生時の妊娠期間と青年期における死亡との関連を検証した。1973年から1979年までに生まれた単生児の国家コホートを総死亡率と死因別死亡率に関して青年期まで追跡調査した。出生時における妊娠期間が短いことは、その年代の始まり地点においてまだ生きている人々の中で青年期における死亡率の増加と独立した関連を有するとの仮説を立てた。

●方法

(1)対象者
 幼年時代後長期にわたる死亡率を調べるため、Swedish Birth Registry(スウェーデン出生登録)から1973年から1979年までの間に生まれ1歳まで生きている単生児678,528人を識別した。0.4%にあたる2,756人が出生時の妊娠期間情報不明、0.1%未満にあたる248人が出生時体重情報不明により除外された。さらに、コーディング時エラーを取り除くため、出生時体重が妊娠期間と性別での出生時平均体重に対するスウェーデンの参照成長曲線から標準偏差4以上上下に離れている704人(0.1%)を除外した。元のコホートの99.5%にあたる674,820人が本研究対象として残った。

(2)死亡確認および出生時の妊娠期間
 研究コホートは1歳から可能な限り最大期間(29歳~36歳まで)総死亡率と死因別死亡率に関する追跡調査を受けた。2008年12月31日までSwedish Death Registry(スウェーデン死亡登録)を用いて死亡確認が行われた。この登録には、全国的な報告義務に基づいてスウェーデンでのすべての死亡に関する情報が含まれている。死因は、International Classification of Disease の第8版・9版・10版(ICD-8、ICD-9、ICD-10)により分類された。

 該当の予測因子は出生時の妊娠期間であり、最後の月経期に関する母親の報告に基づき、Swedish Birth Registryの出生前および誕生に関する記録を用いて識別された。出生時における妊娠期間は、週単位の連続変数としてか、22~27週、28~33週、34~36週、37~42週、43週以上の5グループでのカテゴリー変数としてか、二者択一的に分析された。

(3)他の変数
 匿名の個人識別番号によってリンク付けられたSwedish Birth Registryと国勢調査データを用いて、早産と死亡率に関連あるかもしれない周産期および人口統計学上の特質を識別した。共変数モデルには以下の変数が含まれた。性別、生誕年、出生時の母親年齢(20歳未満・20~24歳・25~29歳・30~34歳・35歳以上)、母親の婚姻状況(既婚または同棲・結婚経験なし・離婚または未亡人・不明)。また、教育に関しては、母親と父親別々に9年以下・10~11年・12年以上・不明のいずれかにより加えられた。

 胎児成長も妊娠期間と性別での平均出生体重に対するスウェーデンの参照成長曲線からの平均偏差で測られ、平均偏差-2未満、平均偏差-2~-1未満、平均偏差-1~0未満、平均偏差0~1未満、平均偏差1~2未満、平均偏差2以上の6グループに分けた。また、出生順位も出生順位の低いことが早産と関連あるとされており、出生順位が高いことは成人期における死亡率増加と関係あるかもしれないため、1・2・3以上として分類された。

(4)統計分析
 妊娠期間と幼児期(1~5歳)・学童期(6~12歳)・少年期(13~17歳)・青年期(18~最大追跡年齢29~36歳)の死亡率との関連をハザード比で推定した。これらの年齢層において、それ以前の死亡を除外し、その年齢層の始まりの時点で生きている人の中での推定となっている。スウェーデンに住所のなくなった36,065人は、移住の年に調査打ち切りとなった。移住した人と移住しなかった人で妊娠期間を比較しても、ほぼ差がなかったことから、移住は実質的なバイアスとはならない。

●結果

(1)早産に関するデータ
 1973~1979年のスウェーデンにおける早産率は5%だった。37週未満の早産で生まれた幼児のうち初年に死亡したのは8.6%で、22~27週で70.7%・28~33週で18.4%・34~36週で3.1%となっており、妊娠満期37~42週が0.7%・43週以上が1.0%だった。引き続いて行われた分析は、1973~1979年に単生児として生まれ1歳まで生きた674,820すべてが基になっている。このうち、27,979人が37週未満の早産で生まれ、22~27週226人・28~33週5,163人・34~36週22,590人という内訳になっている。早期産児は正期産児よりも男であり第一子である傾向、母親の年齢が出産時20歳未満か35歳以上または未婚である傾向、母親と父親の教育到達度が低いか不明である傾向があった。

(2)総死亡率
 1歳から最大到達年齢29~36歳までの追跡期間20.8百万人年において7,095件の死亡が確認された。1,000人年あたりの全体の死亡率は、幼児期(1~5歳)0.33、学童期(6~12歳)0.15、少年期(13~17歳)0.25、青年期(18~36歳)0.47となった。それぞれの期間において、いまだ危険にさらされている人の中で、出生時の妊娠期間と幼児期における死亡率との間には強い負の相関が見られ、妊娠期間が1週間増すごとのハザード比は0.92(信頼区間 95% 0.89~0.94 P<0.001)となり、学童期0.99(信頼区間 95% 0.95~1.03 P=0.61)、少年期0.99(信頼区間 95% 0.95~1.03 P=0.64)では相関関係は見られず、青年期になると再び負の相関が見られ、0.96(信頼区間 95% 0.94~0.97 P<0.001)となった。

青年期(18~36歳)における1,000人年あたりの死亡率を妊娠期間ごとで見ると次のようになった。
1 22~27週 0.94/1,000人年
2 28~33週 0.86/1,000人年
3 34~36週 0.65/1,000人年
4 37~42週 0.46/1,000人年
5 43週以上 0.54/1,000人年

 幼児期と青年期においては、早産は34~36週で生まれた場合でも死亡率増加と関連があった。34~36週で生まれた人と妊娠満期で生まれた人の1,000人年あたりの死亡率は、それぞれ、幼児期0.53対0.32、青年期0.65対0.46となった。34~36週で生まれた場合と死亡率との関連を妊娠満期で生まれた場合と比較したハザード比で見ると、幼児期1.53(信頼区間 95% 1.18~2.00 P=0.001)、青年期1.31(信頼区間 95% 1.13~1.50 P<0.001)となった。

 反対に、妊娠期間は学童期(6~12歳)と少年期(13~17歳)における死亡率とは関連がなかった。この年齢層における、34~36週で生まれた場合と死亡率との関連は、わずかに上昇点推定となっているが、統計的に有意なところにまでは到達しなかった。

(3)死因別死亡率
 幼児期(1~5歳)においては、出生時の妊娠期間は、ほとんどが心臓欠陥であるところの先天性異常での死亡率と最も強い負の相関を示し、妊娠期間が1週間増すごとのハザード比は0.83(信頼区間 95% 0.79~0.87)となり、また、内分泌障害や呼吸器障害とも強い負の相関を示した。幼児期(1~5歳)において、心臓血管疾患・神経障害・がん・傷害との有意な関連は見られなかった。

 学童期(6~12歳)と少年期(13~17歳)は、単独でも統合後でも出生時の妊娠期間と死因別死亡率との間に有意な関連は見られなかった。

 青年期(18~36歳)においては、出生時の妊娠期間は、妊娠期間が1週間増すごとのハザード比で見て、先天性異常0.80(信頼区間 95% 0.74~0.86)・呼吸器障害0.85(信頼区間 95% 0.76~0.94)・内分泌障害0.88(信頼区間 95% 0.81~0.97)と、これらによる死亡率との間で強い負の相関を見せた。この年齢層においては、心臓血管疾患による死亡率とも負の相関が見られ、ハザード比は0.93(信頼区間 95% 0.88~0.99)であった。神経障害・がん・傷害との間には有意な関連はなかった。

●考察

 本研究において、出生時の妊娠期間は1973~1979年に生まれたスウェーデンの人々の中で青年期における死亡率増加と関連することが分かった。青年期における早産と死亡率増加は、34~36週で生まれた場合でも関連があった。1~36歳までの長い年齢幅で見ると、出生時の妊娠期間と死亡率との間には、幼児期(1~5歳)において強い負の相関が見られ、学童期(6~12歳)および少年期(13~17歳)においては見られなくなるも、青年期(18~36歳)において再度見られるようになった。

 知る限りにおいては、本研究が出生時の妊娠期間が成人期の死亡率に与える特定影響について報告した初めてのものであり、早産がもたらす長期間にわたる健康的後遺症を強調するものである。死因別死亡率に関する研究成果は、同じコホートにおいて妊娠期間の短さと喘息・高血圧・糖尿病・甲状腺機能低下症など様々な病気への罹患率とについて以前に発表したものと一貫している。潜在的な仕組みはいまだ大部分が知られてはいないが、胎児期と出生後の栄養的異常、グルココルチコイドや性ホルモン異状など他の子宮内曝露、遺伝的要因の複雑な相互作用によるものかもしれない。

 米国やヨーロッパでは過去30年間において早産は増えており、米国では毎年520,000例以上となっていることから医療費増大にも影響が出ている。生き残った人たちは、ほとんどが青年期において機能も自己申告による生活の質も高いレベルを維持しているが、長期間には罹患率や死亡率が高まるかもしれないことも予想されるのである。早産を予防するための効果的戦略を立てること、原因経路に対する理解を深めること、人生における長期にわたる健康的後遺症の可能性を認識することが求められているのである。

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