全国の基幹的医療機関に配置されている『ロハス・メディカル』の発行元が、
その経験と人的ネットワークを生かし、科学的根拠のある健康情報を厳選してお届けするサイトです。
情報は大きく8つのカテゴリーに分類され、右上のカテゴリーボタンから、それぞれのページへ移動できます。

ビタミンEサプリで前立腺がんリスク上昇

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ビタミンEサプリメントを単独摂取していた男性群で、前立腺がんのリスクが上昇したそうです。

Vitamin E and the Risk of Prostate Cancer : The Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT)

Eric A. Klein, MD; Ian M. Thompson, MD; Catherine M. Tangen, DrPH; John J. Crowley, PhD; M. Scott Lucia, MD; Phyllis J. Goodman, MS; Lori M. Minasian, MD; Leslie G. Ford, MD; Howard L. Parnes, MD; J. Michael Gaziano, MD, MPH; Daniel D. Karp, MD; Michael M. Lieber, MD; Philip J. Walther, MD, PhD; Laurence Klotz, MD; J. Kellogg Parsons, MD, MHS; Joseph L. Chin, MD; Amy K. Darke, MS; Scott M. Lippman, MD; Gary E. Goodman, MD; Frank L. Meyskens, MD; Laurence H. Baker, DO

JAMA. 2011;306(14):1549-1556. doi:10.1001/jama.2011.1437.

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

●背景

The Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT)の最初の報告書で、比較的健康な男性では、セレニウムサプリメントでもビタミンEサプリメントでも前立腺がんの危険度を下げることは認められなかった一方、ビタミンEサプリメントで統計的に有意ではないが前立腺がんの危険度を上げる傾向が見られたため、ビタミンEとセレニウムの長期的な影響について調査をした。


●デザイン

アメリカ合衆国、カナダ、プエルト・リコの427研究機関から集められた35,533人の男性のうち、前立腺特異抗原(PSA)が4.0ng/mL以下で直腸指診において前立腺がんの疑いがない50歳以上の黒人および55歳以上の他の人種を適格とした。適格となった34,887人を無作為に以下4群へ割り付けた。

経口セレニウム(1日あたり200マイクログラム from L-selenomethionine:セレノメチオニン)とビタミンEのプラセボ群、ビタミンE(1日あたり400IU(国際単位)of all rac-α-tocopheryl acetate:酢酸トコフェロール)とセレニウムのプラセボ群、セレニウムとビタミンE両方摂取群、両方ともプラセボ群の4群に振り分け、最低7年間、最高12年間追跡調査を行った。セレニウムのみ摂取が8,752人、ビタミンEのみ摂取が8,737人、両方とも摂取が8,702人、両方ともプラセボが8,696人だった。

予定されていた中間分析に基づき、データおよび安全性モニタリング委員会が2008年9月15日に開かれ、危険度減への効力不足および有害な試験の可能性があるとの判断から、研究としてのサプリメント摂取は早期停止が勧められた。

●結果

2008年10月に出された最初の報告書では、平均5.5年間の追跡期間で、前立腺がんが見つかった人数は、ビタミンE群で473人(ハザード比1.13 信頼区間99% 0.95~1.35)、セレニウム群で432人(ハザード比1.04 信頼区間99% 0.87~1.24)、セレニウムとビタミンE両方摂取群で437人(ハザード比1.05 信頼区間99% 0.88~1.25)、比較対象のプラセボ群で416人であった。統計的に見て有意と言える結果ではないものの、データおよび安全モニタリング委員会は、ビタミンEとプラセボセレニウム摂取群に見られる前立腺がんの危険度増加傾向と、セレニウムとプラセボビタミンE群における2型糖尿病の危険度増加を懸念した。

その後、発症追跡のみを継続。2011年7月5日までに収集された各機関からのデータを反映したところ、最初の報告書から521件の前立腺がん発症が追加された。基準となるプラセボ群で113人が前立腺がんになったのに対して、ビタミンE群では147人(ハザード比1.17 信頼区間99% 1.004~1.36 P=0.008)、セレニウム群では143人(ハザード比1.09 信頼区間99% 0.93~1.27 P=0.18)、セレニウムとビタミンE両方摂取群では118人(ハザード比1.05 信頼区間99% 0.89~1.22 P=0.46)となり、健康男性におけるビタミンEサプリメントの単独摂取は、前立腺がんを増加させる有意な傾向が見られた。

  • 患者と医療従事者の自律をサポートする医療と健康の院内情報誌 ロハス・メディカル
月別アーカイブ
サイト内検索