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献血の先にある大きな国際貢献

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

世界での血友病

 先述の通り、国内では、血友病患者の生命予後やQOLは大幅に改善しました。が、世界に目を向けると、実はなんと患者の75%は治療を受けられていないという現状があります(WFH<世界血友病連盟>推計)。その生命予後やQOLは、日本の1960年代以前と同様のものであることが推測されます。

98-t.3.jpg 地域ごとの経済格差に起因する治療へのアクセス格差です。

 第8因子製剤を例にとると、世界人口の過半数を占める(患者の割合は人口あたりほぼ一定なので、患者数でも過半数を占めると考えられます)アジア・太平洋地域での使用量は全体の15%以下です。逆に人口の15%程度しかいない北米+ヨーロッパ地域で、実に7割以上を使用しています(グラフ2)。

98-t.4.jpg アジアの中でも格差は顕著です(グラフ3)。人口1人あたり製剤使用量が1単位以上あれば、その国の患者は成人まで生きられると考えられていますが、その水準に達しているのは日本を含めて4カ国しかありません。しかもグラフに出てくる下位5カ国は、使用量が報告されているだけ、報告すらできない他の国よりマシなのです。

 こうした状況を受けてWFHでは、メーカーから製剤の現物提供を受けて、途上国の医療機関へ寄付するという取り組みを1996年から行っています。しかし日本のメーカーは、まだ製剤の現物提供に参加していません。

 このため、「ヘモフィリア友の会全国ネットワーク」が3月29日、メーカーの元締め的立場にある日本赤十字社に対して、日本も参加するよう要望を行ったということなのです。

 日本赤十字社の近衛忠煇社長からは1週間後の4月5日に、「先ずは献血者の十分なご理解を得ることが必要と考えております。その上で持続的な国際協力体制の在り方、血液製剤輸出等に関わる法的な問題等々について国の方針を見据えながら、可能な限りの協力を検討させていただく所存です」との返事が来たそうです。

 ちなみに、日本で使われずに捨てられている第8因子すべてを製剤化して提供したとすると、全世界の血友病A患者が成人まで生きられるようになる計算と言います。結構インパクトの大きな話なのです。

 「世界で尊敬される日本」をめざすのならば、迷う必要などない話に見えます。日本赤十字社や厚労省の具体的な行動を注目していきたいと思います。

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