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オーダーメイド医療で命を削る?

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 今回は「がんになった後の生き方」ということで、高額医療費の問題について取り上げたいと思います。

(2010年9月、【山大GCOEコホート通信】vol.4 コラムとして配信)

成松宏人 山形大学グローバルCOEプログラム 先端分子疫学研究所 准教授

 最近、毎日新聞で、大きく取り上げられていました。

 ひとことでいうならば、新薬の値段が高すぎて患者負担が払いきれないほど多くなってしまっているというものです。たとえば、この記事で取り上げられた多発性骨髄腫という血液のがんの一種の患者さんの新薬の値段は、月に約93万円で、3割の自己負担で約28万円。高額医療費療養費制度の還付を受けても4万4千円の支払いが必要と取り上げられていました。

 4万4千円なら大したことないじゃないかと思われるかもしれませんが、問題はこれを長期間にわたり支払い続けることにあります。例えば、この患者さん場合、問題になっている新薬は飲み薬で、効果がある限り飲み続けることになります。年間で単純計算して50万円を超える負担です。これを長期間負担し続けることは、かなり大変です。患者さんの中には負担に耐えられずに薬の中止を余儀なくされる、つまり「命を削る」場合も出てくるのではと心配されています。

 これは、医療におけるイノベーション(技術革新)がもたらした新たな問題です。家にいながら飲み薬で病気の進行が抑えられたり、治療できたりするようになったことは本当に画期的なことです。一昔前ならば、テレビなどの家電の普及、最近ならばIT技術の発達といった産業界のイノベーションのおかげで私たちの生活は豊かになりました。同じように、医療のイノベーションが患者さんのQOL(生活の質)の向上をもたらしたのです。

 しかし、これに社会が追いつけていないのが今回の問題の大きな原因ではないでしょうか。具体的には、今までがんの治療は、手術といった入院で短期間に行うことが主で、このような治療を医療システム自体が想定しておらず、対応できなくなってしまった面が大きいと個人的には考えています。解決策は2つです。ひとつはさらなるイノベーションを起こし、もっと安価で同じぐらいの効果の得られる治療法を開発すること。ふたつめは、医療費負担を含む医療システムを今の新しい医療にあわせて変えていくことです。ふたつめには「痛み」が伴う改革が必要になるかもしれません。

 私たちの研究の最終的な目標のひとつはゲノムコホート研究のデータを元に創薬、つまり新しい薬剤の開発につなげることです。さらには、これを患者さんの待つベットサイドまで有効につなげていくことです。しかし、特に私たちが目指しているオーダーメイド医療に関係する薬は開発費が高くなり、それが、そのまま医療費と高くしてしまうことが予想されます。せっかく研究がうまくいっても世の中に効率よく還元されなければ意味がありません。この高額医療費問題がどうなっていくのか私も注意深く見守っていきたいと思います。

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