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着色料が子供の発達障害を引き起こす!?

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前回までは体に役立つ植物色素、フィトケミカルの話でした。今回は対照的に人工的な着色料の話。あまり話題になることはありませんが、その実、安全性などはどの程度信じてよいのでしょうか・・・?

大西睦子の健康論文ピックアップ82

大西睦子 内科医師、ボストン在住。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月から7年間、ハーバード大学リサーチフェローとして研究に従事。

大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。


前回までは"ヘルシーな食品の色"としてフィトケミカルをご紹介しました。今回は逆に、"人体への悪影響が懸念されている食品の色"の話題です。

このほど米パデュー大学の研究者らは、食品に添加される合成着色料※1が、注意欠陥障害(ADHD; Attention Deficit Hyperactivity Disorder)※2などの行動障害を引き起こす可能性があるというレビューを報告しました。

Laura J Stevens, Thomas Kuczek, John R Burgess, Mateusz A Stochelski, L Eugene Arnold, Leo Galland
Mechanisms of behavioral, atopic, and other reactions to artificial food colors in children
DOI: 10.1111/nure.12023


さらに著者らは、ADHDの発症にかかわらず、着色料は子供に悪影響があることを示しています。

ADHDは、注意力・集中力がなく(=不注意)、じっとできず落ち着きがない(=多動性)、結果を考えず自分勝手に行動する(=衝動性)の3つを特徴とする発達障害です。文部科学省による調査では、国内でADHDを疑われる子供は全体の2.5%にも上ると報告されています。さらに最近は、子供の頃に始まったADHDが大人になっても残る場合が問題になっています。

ADHDに関する初期の研究ではたいてい、合成着色料20〜40mgの刺激に反応した子供はほんの少数でした。ところが、合成着色料を少なくとも50mg用いた研究では、刺激に反応した子供が多数認められました。

原因メカニズムが、毒物学、抗栄養、および過敏症の3つの側面から検討されています。動物や子供のへの投与試験により、免疫システム、腸粘膜、栄養吸収などに対する着色料の影響が観察されています。着色料の子供たちの行動への悪影響を考える際、なぜ一部の子供たちが他の子供たちより着色料に敏感なのか、理由を確認することは重要です。また、一般的の子供と高リスクの子供、両者の着色料の許容上限を知ることも大切です。

現在、日本では食用タール色素※3として、次の12種類の使用が認可されています。

食用赤色2号
食用赤色3号
食用赤色40号
食用赤色102号
食用赤色104号
食用赤色105号
食用赤色106号
食用黄色4号
食用黄色5号
食用緑色3号
食用青色1号、
食用青色2号

これらのタール色素は、様々な試験で毒性がないとされ、厚生労働省が成分規格と使用基準を定めています。

一方、米国では現在、9種類の着色料が米国食品医薬品局(FDA;Food and Drug Administration))により食品への使用を承認されています。

Brilliant Blue FCF (Blue 1)=青色1号
Blue #2 (Indigotine) =青色2号
Yellow #5 (Tartrazine) =黄色4号
Yellow #6 (Sunset Yellow)=黄色5号
Green #3 (Fast Green) =緑色3号
Red # 3 (Erythrosine) =赤色3号
Red #40 (Allura Red) #40=赤色40号
Citrus Red #2:オレンジの皮を着色するためのみ使用許可
Orange B:ホットドッグやソーセージの皮で許可。ただし製造業者は使用していません。

つまり、日本では食用タール色素として許可されている、食用赤色2号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号の5種類の色素の使用は、米国では許可されていません。他国で使用が禁じられているものを使い続けることができるというのは、どういうことでしょうか。
なお、イギリスでは2009年末までに、以下の6種類の着色料が自主的な段階的廃止の対象となりました。

黄色4号
キノリンイエロー 黄色5号
カルモイシン
ポンソーレッド
赤色40号

欧州連合(EU)は現在、これらの着色料のいずれかが存在する場合「この食品は、子供の活動や注意に悪影響を及ぼす可能性があります」という旨の警告の食品ラベルが必要とされます。


このように、各国で着色料の使用許可は大きく異なるのです。


さて、これらの色素は全て、石油から作られます。

中でも、その化学構造の一部として1つ以上のアゾ基(二つの窒素の間が二重結合で結ばれた箇所)を含有するアゾ色素あるいはアゾ染料は、最も一般的な食用色素です。このグループは、食品中に自然には発生しません。赤色40号や黄色5号はアゾ染料であり、米国では子どもたちが消費する食品に普通に使用されています。 アゾ染料の特性は、含まれるアゾ基その他の要素や数、配置によりますが、黄色4号と黄色5号には酵素の代謝や吸収を困難にする要素も含まれています。

赤色3号はアゾ染料ではありませんが、4つのヨウ素原子を含んだ水溶性染料です。動物に甲状腺腫瘍を引き起こすことが報告されたため、化粧品や外用医薬品への使用がFDAによって禁止されました。ところがまだ食品で許可されていて、少量使用されています。

ちなみに、青色1号と緑色3号には、理科の実験で試薬として使われれるフェノールフタレイン(溶液がアルカリ性に反応して無職から赤紫色に変化)と構造上同じ仲間のトリフェニルメタンが使用されています。青色2号は、日本人になじみのある藍染の染料と同じ藍の成分をスルホン化して、人工的に作り出したものです。

以上のように、認可された着色料であっても、完全に安全面での不安がないとは言い切れません。しかしながらFDAのデータによると、米国ではFDAにより認可された着色料の使用は、1955年の一人当たり12 mg/日から2010年には62mg/日へと、5倍も増加しています。そのうち40%が赤色40号、続いて黄色5号27%、黄色6号24%となっており、9割以上を赤色40号、黄色5号、黄色6号が占めていることになります。青色1号、青色2号、赤色3号、緑色3号は、それぞれ4%となっています。


私達の身の回りでは特に、ソフトドリンク、スポーツ飲料、フルーツドリンクなどの清涼飲料水に、着色料が使用されています。糖分の取り過ぎで子供の肥満の原因になるだけではなく、ADHDのリスクも懸念されるというわけです。やはり、自然な色の食品を摂取するべきですね。この話題、次回も続きます。

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