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男性の飲酒パターンと糖尿病リスク

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 日本の虎の門病院の研究チームが、健康な男性を対象に、飲酒形態と糖尿病発現リスクとの関連を調査したところ、飲む回数が少なくても1回に多量に飲むとリスクが上がり、週に6回以上でも1杯未満の飲酒は、リスクが最も低くなることが分かりました。

Role of alcohol drinking pattern in type 2 diabetes in Japanese men: the Toranomon Hospital Health Management Center Study 11 (TOPICS 11).
Heianza Y, Arase Y, Saito K, Tsuji H, Fujihara K, Hsieh SD, Kodama S, Shimano H, Yamada N, Hara S, Sone H.
Am J Clin Nutr. 2013 Mar;97(3):561-8. doi: 10.3945/ajcn.112.043364. Epub 2013 Jan 23.

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 糖尿病リスクに対する飲酒形態の影響に関する過去の研究結果は一致していない。

 本研究では、飲酒頻度および飲酒量が、2型糖尿病発現に対して果たす役割を調査することを目的とした。

 糖尿病を空腹時血糖値7.0mmol/L以上、または糖化ヘモグロビン6.5%以上、または自己申告による医師からの糖尿病診断と定義し、糖尿病ではない1,650人の日本人男性を対象とした。平均アルコール摂取量および頻度と1回あたりの飲酒量による12の組み合わせが、ベースライン時検査で評価された。糖尿病発現に対する絶対リスク及びハザード比が算出された。

 平均10.2年の追跡調査期間中、216人が糖尿病を発現した。生涯を通じての禁酒者153人は、1,000人年中9.1と相対的に低い糖尿病有病率となり、週に99~160gのエタノール摂取者である適度なアルコール摂取者も1,000人年中9.0と同様の結果となった。飲酒頻度にかかわらず、1回あたりのアルコール摂取量が高いほど、糖尿病リスクが高まった。最も低い糖尿病有病率である1,000人年中8.5は、週に6回以上、1回に1杯未満、23g未満のアルコール摂取をすることと関連があった。頻度にかかわらず、1回に3杯以上の過度の飲酒は、1回に1杯未満との比較において、ハザード比1.79(信頼区間95%、1.17~2.74)で将来の糖尿病リスクを有意に高めた。

 現在飲酒者において、週に6回以上、定期的に1杯未満の飲酒形態が、糖尿病発現の最も低いリスクと関連あった。飲酒の頻度よりも、1回に飲酒する量の方が、日本人男性におけるアルコール摂取と糖尿病リスクにおける、より重要な決定因子となった。

●方法

(1)対象者
 1997~2002年までに合計29,584人が、虎の門病院健康管理センターで健康診断を受けた。すべての受診者が、それぞれの健診時に、病歴・人口統計学的特性・健康関連習慣に関する情報を収集する標準的質問票を用いての面談を受けた。定期健康診断は、政府および企業が定期的健診を受けることを奨励していることから、日本においては大変に一般的なものとなっている。これらの29.584人中、毎年健康診断を受けた26~80歳の2,476人のデータを、8~13年間追跡調査した。ベースライン時検査で糖尿病を有していた100人、またはベースライン時特性に関する欠陥データがあった167人を除外した。結果として、2,215人が本分析に対して適格者となった。これらの2,215人中、565人の女性に対しては37人の糖尿病発症という、意味ある分析をするためには十分とはならないデータであったころから、男性1,650人のみを調査した。2型糖尿病の診断は、アメリカ糖尿病学会の基準により、空腹時血糖値7.0mmol/L、または自己申告による医師からの糖尿病診断、糖化ヘモグロビン(HbA1c)6.5%以上とした。

(2)飲酒習慣評価
 アルコール摂取習慣は、ベースライン時検査において、標準的質問票を用いて評価された。対象者は、現在の飲酒状況(禁酒者・過去飲酒者・現在飲酒者)について尋ねられ、飲酒形態は、現在飲酒者と過去飲酒者に対して評価された。過去飲酒者は、過去の習慣を評価され、飲酒停止期間についても評価された。その後、一度もアルコール摂取をしたことのない生涯禁酒者と、アルコール摂取をしたことはあるが現在はしていない不定期禁酒者とを区別し、禁酒者に対する病気離脱影響を除外した。それ故に、現在飲酒状況を、生涯禁酒者・過去飲酒者・現在飲酒者の3分類とした。

 本研究グループでは、1回あたりのアルコール摂取量×アルコール摂取頻度によって、週あたりのエタノールグラム数(g ethanol/week)での平均アルコール摂取量を算出した。平均アルコール摂取量は、8~54、55~98、99~160、161~229、230~287、288~748g ethanol/weekの六分位に分類した。本研究に対しては、適度なアルコール摂取という用語を99~160g ethanol/week(14~23g ethanol/day)に、多量のアルコール摂取という用語を288~748g ethanol/week(41~107g ethanol/day)に、それぞれ割り当てた。一般的に、日本において、適度なアルコール摂取は20g ethanol/day、多量のアルコール摂取は60g ethanol/dayによって表される。米国の食事指針によると、適度なアルコール摂取は1日に2杯以下(24g ethanol/day)で、多量のアルコール摂取は1日に4杯超(48g ethanol/day超)によって表される。これらの数値は、本研究において使われた定義とほぼ一致する。

 アルコール摂取頻度は、週に1または0回、週に2~3回、週に4~5回、週に6回以上に分類された。1回あたりの摂取量は、1杯未満、1~2杯、3~5杯以上に分類された。1回あたりの摂取量は、日本酒1単位である23gのエタノールと同等量、または同等量のビンビールによって表された。1杯の標準摂取量の一般的定義は国によって異なっており、例えば、米国での1杯は12gのエタノールとなっている。日本人男性対象の本研究においては、一般的な日本の単位を用いたので、日本での1杯は、ほぼ米国の2杯に相当することとなった。米国の国立アルコール乱用・依存症研究所によると、酒浸りとは、血中アルコール濃度が0.08%以上になるアルコール摂取形態として定義されている。この飲酒形態は、通常男性に対しては、1回あたり米国単位での5杯以上、日本単位での3杯以上に相当する。本研究においては、酒浸りを、頻度にかかわらず、1回に3杯以上摂取する場合とした。

(3)臨床的測定
 身長と体重は、靴を履かない軽装で計測され、BMIが、キログラム体重÷メートル身長の二乗で算出された。血圧は、座位で熟練病院スタッフにより計測された。血液標本は、1晩12時間絶食後に採取され、自動分析器によって計測された。血糖値、血清トリグリセリド値、総コレステロール値、HDL-C値は、酵素法によって測定された。HbA1cは、高速液体クロマトグラフィーにより評価された。HbA1cは、日本糖尿病学会値(%)×1.02+0.25%として、国際標準値であるNational Glycohemoglobin Standardization Programによって評価された。

(4)統計分析
 それぞれの対象者に対する追跡調査期間は、最初の振り分け検査日から糖尿病確定日まで、または最終追跡検査日までで算出された。糖尿病発現に対する、ハザード比と信頼区間95%を、Cox回帰モデルを用い推定した。

●結果

 1,650人の対象男性中、9.3%にあたる153人は生涯禁酒者であった一方、88.3%にあたる1,457人が現在飲酒者だった。Spearmanの相関テストによって、総アルコール摂取量(g ethanol/week)は、現在飲酒者において、トリグリセリド値・HDL-C値・γグルタミルトランスフェラーゼとの正方向への相関を示し、P<0.01となった。

 平均(±標準偏差)10.2±2.8年、合計16,804人年の追跡調査期間中、216件の糖尿病を記録した。過去飲酒者は40人のみで、これらの対象者は1,000人年中26.9という顕著に高い糖尿病率となった。生涯禁酒者は、1,000人年中9.1と相対的に低い糖尿病率になり、99~160g ethanol/weekの適度なアルコール摂取者も、同様に1,000人年中9.0と低い糖尿病率になった。多変量Cox回帰分析の結果は、生涯禁酒者との比較において、平均アルコール摂取量は糖尿病発現と非線形関係となることを示した。生涯禁酒者との比較において、より高いアルコール摂取量は、230~287g ethanol/weekでのハザード比が1.71(信頼区間95%、0.92~3.19、P=0.089)、および288~748g ethanol/weekでのハザード比が2.05(信頼区間95%、1.09~3.87、P=0.027)となった。適度なアルコール摂取(99~160g ethanol/week)は、生涯禁酒者との比較において、有意により低い糖尿病リスクとはならず、ハザード比は1.05(信頼区間95%、0.55~2.03)であった。それ故に、現在飲酒者において、糖尿病発現に対する飲酒量と飲酒頻度との様々な組み合わせの影響を調べるため、さらなる分析を実施した。

 現在飲酒者における、頻度と1回あたりの摂取量との連合効果による糖尿病絶対リスク調査の結果、1回あたりのアルコール摂取量がより高いことが、それぞれの摂取頻度にわたって1,000人年あたりの糖尿病率が増加することと関連あった。週に6回以上1杯未満の摂取形態である132人は、頻度と摂取量による12の組み合わせ中最も低い糖尿病率となり、1,000人年中8.5であった。週に1または0回の短期間で1回あたり3~5杯以上の摂取形態である22人は1,000人年中32.6、および1回あたり1~2杯の摂取形態である76人は1,000人年中18.8となり、糖尿病率が高くなることと関連あった。

 年齢・親の糖尿病歴・喫煙習慣(一度も喫煙なし・過去喫煙・現在喫煙)・身体活動習慣(少なくとも週に1回、1回あたり20~30分以上の身体活動)で補正を加え、週に6回以上1回あたり1杯未満を比較基準とした多変量Cox回帰分析において、週あたり1回または0回の低頻度で1回あたり1~2杯、または3~5杯以上の高摂取量での摂取形態は、それぞれ、糖尿病発現に対してのハザード比が2.83(信頼区間95%、1.30~6.15)、4.23(信頼区間95%、1.63~11.0)と有意に高いハザード比との関連があった。BMIを補正に加えた場合、さらに代謝因子(高血圧・トリグリセリドのログ変換値・HDL-C値・白血球数・アラニントランスアミナーゼ濃度)を補正に加えた場合には、ハザード比は減じられた。アルコール摂取量と頻度変数との間に、糖尿病発現に対する有意な相互作用は観察されず、P<0.10であった。

 そこで、糖尿病リスクとアルコール摂取頻度・1回あたりの摂取量・総アルコール摂取量とが独立した関連にあるかどうかを調べた。全部で4つの多変量Cox回帰モデルを用意した。
1 モデル1 1回あたりのアルコール摂取量・総アルコール摂取量(g ethanol/week)・年齢・親の糖尿病歴・喫煙習慣・身体活動習慣・BMI・高血圧・トリグリセリドのログ変換値・HDL-C値・白血球数・アラニントランスアミナーゼ濃度で補正
2 モデル2 アルコール摂取頻度・総アルコール摂取量(g ethanol/week)・年齢・親の糖尿病歴・喫煙習慣・身体活動習慣・BMI・高血圧・トリグリセリドのログ変換値・HDL-C値・白血球数・アラニントランスアミナーゼ濃度で補正
3 モデル3 1回あたりのアルコール摂取量・アルコール摂取頻度・年齢・親の糖尿病歴・喫煙習慣・身体活動習慣・BMI・高血圧・トリグリセリドのログ変換値・HDL-C値で補正
4 モデル4 モデル3+白血球数・アラニントランスアミナーゼ濃度で補正

モデル1および2においては、総アルコール摂取量にかかわらず、1回あたりの摂取量、あるいは頻度は、糖尿病発現と有意に関連した。

モデル1(P=0.008)
①1回あたり1杯未満(499人)  1.00(比較基準)
②1回あたり1~2杯(669人)   1.45(信頼区間95%、1.004~2.11)
③1回あたり3~5杯以上(289人) 2.13(信頼区間95%、1.21~3.74)

モデル2(P=0.046)
①週に1または0回(248人)   1.00(比較基準)
②週に2~3回(306人)      0.71(信頼区間95%、0.44~1.13)
③週に4~5回(389人)      0.61(信頼区間95%、0.38~0.997)
④週に6回以上(514人)     0.56(信頼区間95%、0.33~0.96)

 1回あたりの摂取量と摂取頻度の両方を入れたモデル3では、両方が独立して将来の糖尿病を予測した。1回あたりの摂取量は糖尿病のハザード比が増すことと関連あり、摂取頻度はハザード比が減ることと関連あった。

モデル3(P=0.012)
①1回あたり1杯未満(499人)  1.00(比較基準)
②1回あたり1~2杯(669人)   1.44(信頼区間95%、1.01~2.07)
③1回あたり3~5杯以上(289人) 1.79(信頼区間95%、1.17~2.74)

モデル3(P=0.082)
①週に1または0回(248人)   1.00(比較基準)
②週に2~3回(306人)      0.65(信頼区間95%、0.41~1.03)
③週に4~5回(389人)      0.61(信頼区間95%、0.40~0.95)
④週に6回以上(514人)     0.64(信頼区間95%、0.42~0.97)

 さらに、白血球数とアラニントランスアミナーゼ濃度を補正に加えたモデルでは、アルコール摂取頻度の糖尿病発現に対するハザード比は弱められたが、1回あたりの摂取量がより高いことは、有意に糖尿病リスクを高めた。

モデル4(P=0.012)
①1回あたり1杯未満(499人)  1.00(比較基準)
②1回あたり1~2杯(669人)   1.46(信頼区間95%、1.02~2.10)
③1回あたり3~5杯以上(289人) 1.79(信頼区間95%、1.17~2.74)

モデル4(P=0.142)
①週に1または0回(248人)   1.00(比較基準)
②週に2~3回(306人)      0.68(信頼区間95%、0.43~1.08)
③週に4~5回(389人)      0.67(信頼区間95%、0.43~1.03)
④週に6回以上(514人)     0.67(信頼区間95%、0.44~1.03)

●考察

 明らかに健康な日本人男性を対象とした本研究では、アルコール摂取と糖尿病リスクとの関連において、週あたりの頻度よりも、1回あたりの摂取量の方がより重要な決定因子であることが分かった。現在飲酒者においては、1回あたり1杯未満(23g ethanol)の場合と比較すると、1回に3杯以上の過度の摂取は、週に飲酒する頻度にかかわらず、糖尿病の絶対リスクが高まった。現在飲酒者において調査したすべての飲酒形態組み合わせの中で、週に6回以上、1回あたり1杯未満という形態が、糖尿病発現のリスクが最も低いことと関連あった。

 本研究の強みは、13年までに及びかなり長期間追跡調査を受けた多数の人が含まれていたことにあり、生涯禁酒者と過去飲酒者を区別した点も強みである。限界としては、アルコール摂取は、ベースライン検査時のみの自己申告データに基づいたことが挙げられる。報告されたエタノールグラム数は正方向にHDL-C値やγグルタミルトランスフェラーゼとの関連があったが、食物摂取頻度調査票のような、より客観的な評価は、アルコール摂取を確認するために実施されなかった。ある研究においては、最初めったに飲酒しなかった人や軽度の飲酒者では、経時的なアルコール摂取増加が2型糖尿病のより低いリスクと関連あることが示されたが、本研究ではアルコール摂取における経時的な潜在的変化は考慮しなかった。他の生活様式にかかわらず、適度なアルコール摂取が将来の糖尿病リスクを低くすることが示されてはいるが、食事因子に関するデータは入手できなかったので、他の低リスク生活様式行動が、本研究結果に影響を与えているかもしれない。本研究には男性のみが含まれたので、糖尿病発現における飲酒形態の役割での男女差を比較するためには、女性を含めた比較的長期にわたる同様の調査が必要である。定期健康診断を受けた人の8%を追跡調査したのみなので、本研究結果の一般化可能性には影響が出るかもしれない。本研究の対象者は、毎年の健康診断を受けている人たちで、健診を受けない人よりも健康に対する意識が高いかもしれないが、肥満率・現在喫煙者・多量のアルコール摂取習慣者(60g ethanol/d)は、日本での全国健康栄養調査の結果と同等のものであったことを確認した。さらに、全国健康栄養調査での臨床的特性は、本研究でのそれと類似したものであった。

 本研究結果は、日本人の男性コホートにおいては、週を通じての適度なアルコール摂取との比較で、不定期な時折の飲酒形態が、糖尿病リスクを高めるかもしれないことを示した。1回あたりの摂取量がより高いことは、週あたりの摂取頻度よりも、糖尿病発現に対するより重要な要素をとなるかもしれない。経時的なアルコール摂取や飲酒習慣の変化と様々な民族性における糖尿病発現との関係を評価するためには、さらなる研究が必要となる。

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