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有酸素トレーニングとウェイトトレーニング、それぞれの効用

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 米国で、体重超過または肥満の人を対象に、有酸素トレーニングのみ、ウェイトトレーニングのみ、有酸素トレーニングとウェイトトレーニングの組み合わせによる運動介入を実施し、体質量・体脂肪量・除脂肪体重・体脂肪率・腹囲などの身体組成における効果を測定したところ、体質量と体脂肪量の低下には有酸素トレーニングが適しており、除脂肪体重増加や体脂肪率低下にはウェイトトレーニングが適していることが分かりました。


Effects of aerobic and/or resistance training on body mass and fat mass in overweight or obese adults.
Willis LH, Slentz CA, Bateman LA, Shields AT, Piner LW, Bales CW, Houmard JA, Kraus WE.
J Appl Physiol. 2012 Dec 15;113(12):1831-7. doi: 10.1152/japplphysiol.01370.2011.

川口利の論文抄訳

発行人の実兄。上智大学文学部卒。千葉県立高校の英語教師在任中に半年間の英国留学を経験。早期退職後に青年海外協力隊員となって、ホンジュラスで勤務、同じく調整員としてパナマで勤務。

 体重減および体重維持のための運動に関する最近の指針は、運動処方の一部としてウェイトトレーニングを含んでいる。しかしながら、体重超過の成人において、同量の有酸素トレーニングとウェイトトレーニングの体質量および体脂肪量に対する効果比較をした研究はほとんどない。無作為試験であるSTRRIDE AT/RTは、肥満減少のための最適な運動方法を決定するために、有酸素トレーニング・ウェイトトレーニング・両方の組み合わせを比較した。座りがちで体重超過または肥満である成人119人が、1)ウェイトトレーニング(resistance training=RT)、2)有酸素運動(aerobic training=AT)、3)両方の組み合わせ(AT/RT)のいずれかを8カ月行う運動計画に、無作為に割り付けられた。主要アウトカムは、体質量・体脂肪量・除脂肪体重であった。AT群とAT/RT群は、RT群との比較において、体質量と体脂肪量がより多く減少した(P<0.005)が、2者間での差異はなかった。RT群とAT/RT群は、AT群との比較において、除脂肪体重がより増加した(P<0.005)。2倍の時間的拘束を要するものの、有酸素トレーニングとウェイトトレーニングの組み合わせプログラムは、有酸素トレーニングのみとの比較で、より有意な体脂肪量ないしは体質量減少には至らなかった。健康利益に対する時間的拘束を比較すると、有酸素トレーニングが体脂肪量および体質量減少のための最適な運動方法である一方、ウェイトトレーニングを含んだプログラムは、中年の体重超過または肥満者において、除脂肪体重増加のために必要とされるようである。

●方法

(1)対象者
 STRRIDE AT/RT研究の対象者は、新聞広告・雑誌広告・インターネット広告・口コミに反応した3,145人から選ばれ、電話でのふるい分けがされた。2,661人は、参加基準を満たさないか参加しないことを選択したため、484人が適格者として残ったが、二次的除外基準によって250人は除外され、234人が採用された。このうち75%はデューク大学で、25%はイーストカロライナ大学での採用となった。

 参加基準は、以下の通りであった。
1 年齢18~70歳
2 週あたりの運動回数が1~2回以下の座りがちな生活である
3 体重超過または若干肥満である(BMI値が25~35kg/m²)
4 軽度から中度の脂質異常症である(LDL-C値が130~190mg/dL、またはHDL-Cが男性では40mg/dL以下、女性では45mg/dL以下)
5 非喫煙者で、糖尿病歴・高血圧歴・冠動脈疾患歴がないこと

(2)無作為化
 書面でのインフォームド・コンセントが提出され、ベースライン時テストが完了した時点で、すべての参加者が、4カ月の導入期間中は現在の生活様式を維持するよう求められ、その後に運動前テストを実施し、三つの運動トレーニング群に無作為割り付けされた。熱心でない対象者は、介入開始前に脱落するだろうことを希望して、管理導入期間を用意することを選択した。重要なことに、このことによって、無作為化の後での脱落者を減らし、研究の妥当性を高めることとなった。実際に、最初のSTRRIDE研究との比較において、今回の研究に対する無作為化後での脱落率は、実質的に減少した。採用された対象者中の90%が導入期間を満了し、運動群へと無作為割り付けされた。

(3)運動トレーニング実施計画
 運動群は、以下の通りであった。
1 ウェイトトレーニング(RT)群 
週に3日、1日あたり3セット、1セットあたり8~12回の反復、8種類の異なるマシンで1日あたり3セットとなり週合計の処方量は72セット、週合計の処方時間は180分

2 有酸素トレーニング(AT)群 
最高酸素摂取量の65~80%での週に12マイルのジョギングとカロリー的に匹敵する処方量、処方時間は平均で133.5時間

3 有酸素トレーニング+ウェイトトレーニング(AT/RT)群
最高酸素摂取量の65~80%での週に12マイルのジョギングとカロリー的に匹敵、処方時間は平均で133.6時間+週に3日、1日あたり3セット、1セットあたり8~12回の反復、8種類の異なるマシンで1日あたり3セットとなり週合計の処方量は72セット、週合計の処方時間は180分

 経時的に実施される有酸素運動量を徐々に増加させるように設計された8~10週間の傾斜期間が、AT群およびAT/RT群のすべての対象者に処方された。運動方法としては、トレッドミル、空中散歩型有酸素運動マシン、自転車エルゴメーターが有酸素運動に含まれた。すべての有酸素運動セッションは、直接的な監視によって、および/または、記録してダウンロード可能なデータを提供する心拍計の使用によって確認された。有酸素遵守割合は、処方された心拍数内での実施時間数÷総処方時間数と等しいこととなり、パーセントとして毎週算出された。

 ウェイトトレーニングに割り付けられた対象者に対して、傾斜期間は、1~2週目は1セット、3~4週目は2セットでトレーニングを始め、5週目に処方された3セットに増やすこととした。RT群は、すべての大筋群を対象に設計された、8~12回の反復によるセットを3セット、週に3回実施するように処方された。ウェイト量は、2回の連続するトレーニング中に、3セットすべてを正しいフォームで12回の反復によって成し遂げるたびに、5ポンド(約2,270グラム)増加された。デューク大学でのすべてのウェイトトレーニングセッションは、直接的な監視によって、および/または、Straight Training Partner(トレーニングマシンに装着して、トレーニング中の正しいフォームや重量を教えたり、フィードバックをしたりする機器)の使用によって確認された。イーストカロライナ大学では、トレーニングセッションは、フィットネス・スタッフの目視によって確認された。それぞれのトレーニングの間ずっと、トレーニングパートナーが、赤外線レーザーで確認される重量・前もって決められた速度と動作限界範囲内で実施された反復回数とセット数を含めた情報を記録し、記憶装置に入れた。

(4)人体計測および身体組成
1 身長は、最も近い0.25cmまで測定
2 体質量は、靴を履かない軽装でデジタル体重計により最も近い0.1kgまで測定
3 腹囲は、へそと剣状突起の間での最も小さな水平腹囲を測定
4 身体組成は、デューク大学では、すべての計測時点ですべての対象者に対して、BOD POD(空気置換法)体脂肪測定装置を用いて測定。イーストカロライナ大学では、二重エネルギーX線呼収測定装置(DEXA)によって測定。

(5)栄養
 カロリー摂取量は、トレーニング期間の最初と最後に実施された、3日間の食物記録と24時間想起面談によって評価された。3日間記録および24時間想起から記録された食事摂取量は、105の栄養成分データを有し15,000を超える品目情報が入手できる専用ソフトウェアによって、カロリーおよび多量栄養素含有量分析がされた。2測定値間の有意な変動性はないことが確認され、2測定値を組み合わせ、それぞれの時点での4日別々のエネルギー摂取量平均を算出した。

(6)コンピュータ断層撮影
 単純CT撮影が実施された。研究の運動無作為化状態を伏せられた熟練CT技師が、CT画像解析を行った。仰臥位にて、左大腿中間点(寛骨臼と膝蓋骨の真ん中)での10mmの軸面像が撮影された。CT画像は、ソフトウェアを用いて、大腿筋領域測定のため分析された。

(7)心肺運動試験
 12誘導心電図と呼気ガス分析を伴う心肺運動試験が、トレッドミルで実施された。連続する、15秒間表示の最高値二つが、絶対値での最高酸素摂取量(L/min)決定のために平均された。

(8)筋力評価
 第5週中の単一セッションからの、上肢および下肢の総持ち上げ重量(ポンド)が、全体筋力のベースライン時測定値として用いられた。32週での単一セッションからの同一尺度が、全体筋力のトレーニング終了時測定値として用いられた。二つの測定値差が、持ち上げポンド数/セッションで表される、全体筋力獲得の構成要素となった。

(9)統計法
 データは、分散分析法(ANOVA)を用いて分析された。ANOVAがP<0.10で有意である場合、群間での差異決定のため、制約付最小有意差検定での多重比較を実施した。この分析法は、国際的に三つのペアワイズ(対)比較に限定されており、AT群・RT群・AT/RT群それぞれの比較に用いた。P<0.05が多重比較において有意と考えられた。

●結果

(1)対象者特性
 ベースライン時の測定値における、有意な群間差異は認められなかった。トレーニングに対する固着性は、AT群またはRT群との比較で、AT/RT群1人分が若干低くなったが、AT/RT群の蓄積総時間数は、その他2群の約2倍となった。4か月間の導入期間に入った234人中、83.7%にあたる196人が3群のうちの一つに無作為割り付けされた。このうち155人が研究介入と試験を完了した。身体組成分析に対しては、119人が、すべての試験時点で一貫した評価法を有した。

(2)身体組成測定
 それぞれの群における最高酸素摂取量増加は、トレーニング刺激の効果を証明しており、ウェイトトレーニングに加わった群での筋力に対する結果も同様であった。どの運動群においても、ベースライン時とトレーニング終了時の間での報告されたエネルギー摂取量に差異はなかった。

 体質量は、AT群では平均-1.76kg(P=0.001)、AT/RT群では平均-1.63kg(P=0.004)と有意に減少したが、RT群では平均0.83kg(P=0.022)と有意に増加した。体脂肪量は、AT群では平均-1.66kg(P=0.001)、AT/RT群では平均-2.44kg(P<0.0001)、腹囲は、AT群では平均-1.01cm(P=0.039)、AT/RT群では平均-1.66cm(P=0.001)と有意に減少したが、RT群では変わりがなかった。除脂肪体重は、RT群では平均1.09kg(P<0.0001)、AT/RT群では平均0.81kg(P=0.001)と有意に増加したが、AT群ではそのような結果にはならなかった。

 AT群とRT群では、身体組成に対する効果が一貫して異なっていた。体質量および体脂肪量は、AT群とAT/RT群の両方で有意に減少したが、RT群ではそのような結果とはならず、これらの測定値変化においては、有酸素運動がより効果的であることを示している。しかしながら、除脂肪体重は、RT群とAT/RT群の両方でAT群よりも有意により大きく、大腿筋領域測定に対する同様の観察結果により支持されるものとなった。

 有酸素トレーニングとウェイトトレーニング両方の恩恵があるため、AT/RT群では、体脂肪量低下と除脂肪体重増加の組み合わせによって、AT群またはRT群よりも有意に大きな体脂肪率低下となった。同様に、AT/RT群が、AT群またはRT群より有意に大きな腹囲減少となったことから、二つの組み合わせは、腹囲に対して明らかな相加効果を有したこととなる。

●考察

 本研究データは、以下の結論を支持するものである。
1 除脂肪体重増加にはより効果的であるものの、ウェイトトレーニングは、有意に体脂肪量および体質量を低下させることにはならなかった。
2 有酸素トレーニングは、それまで座りがちの生活を送っていた糖尿病を抱えていない体重超過または肥満の成人において、体脂肪量および体質量の低下に対して、ウェイトトレーニングよりも効果的であった。
3 時間的拘束を2倍近く受ける一方で、有酸素トレーニングとウェイトトレーニングの組み合わせは、有酸素トレーニングより大きな体脂肪および体質量低下には至らなかった、
4 筋肉量および筋力を増加させることが目的なら、ウェイトトレーニングを含むプログラムが必要となる。
5 生み出される健康効果に対する時間的拘束を比較すると、体脂肪量及び体質量低下に対しては、有酸素トレーニング単独というのが最適であるようだ。

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