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「費用対効果」が日本の医療政策に入ってきた?

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来年度の診療報酬改定に関するニュースが出回るようになる中、こんな記事があった。

1年延命で500万円以上なら薬価下げ 厚労省 費用対効果の仕組みで

過剰な透析、報酬引き下げ 厚労省、18年度改定で

医療費の適正化、削減のための策だが、根本的な予算や医療政策のしくみが変わらない中の細々としたツギハギ対策でいいのかなあと個人的には思ったりする。今はそれしかやりようがないとは思うのだけど。


ロハス・メディカル論説委員 熊田梨恵

医薬品の費用対効果の導入については、画期的ながん治療薬として話題になったオプジーボなど13品目が対象になるそうだ。

オプジーボについては、ロハス・メディカルで詳しく特集されていたのでぜひご覧いただきたい。
集中連載 オプジーボの光と影
国民皆保険と共存できるか (ロハス・メディカル2016年5月号)
難民と医療不信が大発生(ロハス・メディカル2016年6月号)
「次」はドラッグ・ラグ必至(ロハス・メディカル2016年7月号)
日本の医療界は腐っているのか?(ロハス・メディカル2016年8月号)
医療先進国のはずなのに他国の公的研究にタダ乗り(ロハス・メディカル2016年9月号)
より効くキートルーダ対策か やっと薬価引き下げ、の茶番(ロハス・メディカル2016年10月号)
英の希望小売価格は5分の1 それでも「高い」と揉めている(ロハス・メディカル2016年11月号)
既存のルールを使わず国の信頼に傷つける愚(ロハス・メディカル2016年12月号)
子どもの貧困放置して薬に大金はたく不合理(ロハス・メディカル2017年1月号)
目先の小ガネをケチって公共財を売り渡す滅びの道(ロハス・メディカル2017年2月号)

気になったのはここのところ。

費用対効果の仕組みで先行する英国の水準も参考にしながら、既存の薬よりも年間で500万円以上多く費用がかかる場合は薬価を引き下げることにした。

ちょっと古いが、イギリスで医療政策決定に関わっていた森臨太郎氏(現国立成育医療研究センター研究所政策科学研究部長、臨床疫学部長)にインタビューした内容がある。

本来の「根拠」と「総意」に基づくガイドラインとは?-森臨太郎氏インタビュー①
医療政策に総意形成プロセスを-森臨太郎氏インタビュー②

インタビューした時期は古いものだが、状況は今とほとんど変わっていないと思うし、今読み返しても発見がある。これをちょっと読むだけでもイギリスの「費用対効果」に対する考え方、方法の奥深さが分かる。今の日本の政策決定方式と全く異なるため、単純にイギリスを参考にというのもどうなんだろう、良いとこどりの「費用対効果」になりはしないか、と個人的には思ったりする。(ちなみにイギリスと日本ではオプジーボについての取り扱いがだいぶ違うようだが...)

医療費と介護費が年々膨張し、国民皆保険制度の維持が厳しい中、日本の医療政策決定は根本的に見直されなければいけないと思うのだが、組織として大き過ぎる厚労省ではもう難しいのだろうか、直面した課題にのみツギハギでやっていく方法しかないのかなと思う(その結果の一つが年金制度かもしれないが)。

この辺りについては、ぜひロハス・メディカルの問題提起をご覧いただきたい。

曲がり角の国民皆保険(ロハス・メディカル2015年6月号)
●亀田総合病院地域医療学講座「社会保障の見直しはもはや避けられない」(ロハス・メディカル2014年6月号)」
●書籍「地域包括ケアの課題と未来

医療政策決定については、森臨太郎氏の著書「持続可能な医療を創る-グローバルな視点からの提言」もとても興味深く、参考になる。

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