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睡眠のリテラシー69

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 産業疫学研究グループ部長

 グループで物事を進めることは日常生活でよくあります。学校での勉強やクラブ活動はもちろん、職場や地域での様々な活動にも多くの人々が参加します。皆で協力して良い成果を出せた時は独りで達成した時以上に嬉しく感じます。

 複数の人々が同じ目標に向かうには、他の人がどういう気持ちでいて、どのような考え方をするかを慮る能力(共感)が大事になります。ある特定の技術には秀でていても、相手の顔や心を読むのが苦手な人が参加していると、本人も周りも苦労します。最悪、そのグループの空中分解もあり得ます。

 共感の中でも、特に相手の気持ちを理解する能力に注目し、睡眠との関わりを調べた実験がカナダで行われました。20歳代の参加者37名は3群に分けられました。第1群は午後9時にその能力を検査した後、実験室の中で眠らずに一晩を過ごしました。そして、翌朝に同じ検査を行いました。第2群は午後6時に検査を行った後、自宅で睡眠を普通にとって(約6時間半)、翌朝にまた検査しました。第3群は午前中と夕方に2回検査を受けました。

 実際の検査では、参加者は人物とその人の感情がよく表れている写真を見ます。例えば、満面の笑みを浮かべている少女であったり、涙を流して悲しみに暮れている高齢者が写っていたりします。それぞれの写真について、次の3つの質問に答えます:①写真上の人物に抱いた感情はどのくらい強いですか?、②写真を見て、どのくらい気持ちが動かされますか?、③写真の内容は「快い、不快、どちらでもない」のうち、どれに当てはまりますか?

 各群の検査2回目の結果を比べたところ、質問①、②ともに第2群または第3群より、第1群は得点の低いことが分かりました。第2群と第3群は同等でした。男女による違いもありませんでした。従って、徹夜明けでは他人の気持ちを理解しにくくなると考えられます。一方、質問③に対する回答については3群の間に差がなかったので、写真の内容は適切に判断できたと言えます。

 徹夜という条件もさることながら、このような実験室での結果が現実の生活に当てはまるかどうかは分かりません。今回は若手が対象でしたが、中高年ではどのような結果になるでしょうか。また、夜中に目が覚めたりするなど睡眠の質が悪い人ではどうなるかも知りたいところです。

 ともあれ、睡眠をきちんととらないと、周りの人の心の状態が見えなくなるようです。もしそうなると、場違いな行動によって相手を不快な気分にさせてしまうかもしれません。結果として、本人もがっかりします。

 「自分が嫌と感じることは他の人にしてはいけない」と言われます。にもかかわらず、いじめやハラスメントは今、横行しています。グループで快適に作業を進めるには、よく眠っておくという準備が大切になるでしょう。

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