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睡眠のリテラシー66

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 産業疫学研究グループ部長

 24時間化社会と言われてから久しいですが、その傾向は留まらないようです。様々なサービスを何時でも受けられるのは確かに便利です。一方、そうしたサービスを提供する側から見ると事情は変わります。何より、多くの人々が眠っている時に働き、太陽の輝いている時に睡眠をとらなければなりません。

 夜勤を含む交代勤務は日勤だけの勤務に比べて、厳しい働き方と言われています。健康面では、交代勤務者は心臓病や糖尿病など生活習慣病になりやすいと指摘されています。それに対して、長年にわたって交代勤務で働くと頭の健康(認知機能)はどうなるかについては明らかではありません。健康診断では内臓の状態は分かりますが、頭の働きを調べることはできません。認知機能を測るには特別な検査が必要となります。

 この数年、大人数の交代勤務者と日勤者を対象に認知検査を行った成果が発表されています。フランスの労働者三千名程に対して記憶や情報処理の能力などを測る検査を実施したところ、交代勤務で働いたことのない群に比べて、今働いているまたは過去に働いていた群の検査成績は良くありませんでした。ただし、交代勤務を離れてから5年を超えた群では交代勤務経験なし群とほぼ同じ成績であることが分かりました。

 スウェーデンの労働者約七千名に対する調査では、1から13までの数字と「あ」から「し」までの平仮名がばらばらに書かれてある用紙の上を「1→あ→2→い→3→う→4→え→...」というようにできるだけ早くなぞる検査を用いました。この検査は注意集中しながら情報を処理し適切に反応する能力を測れるとして、脳の障害や認知症などの評価に使われています。

 結果をみると、先のフランスでの調査と同じように、交代勤務を辞めて5年を超えている群と交代勤務で働いたことのない群との間に検査成績の違いはありませんでした。

 これらのデータに基づくと、交代勤務は脳の働きを乱す可能性はあるものの、日勤だけで少なくとも5年過ごすと回復する余地があると考えられます。もしこれが確かならば、交代勤務者にとっては嬉しいニュースになります。

 ただ、交代勤務を離れるべき年数がなぜ最短でも5年なのかは今のところ、説明がなされていません。仮に5年であったとしても、その間に脳の中でどのような変化が起こるのかは皆目見当がついていないのが現状です。

 また、対象者数が多いと、認知検査のわずかな得点の差であっても、統計的に意味のある差と判定されやすくなります。検査成績の差が日常生活から見ても意味のある差なのかどうかは慎重に検討する必要があるでしょう。

 交代勤務と一口に言っても、そのパターンは多種多様です。夜勤の回数や長さ、シフトの変わる方向(時計回りか反時計回りか)、休日の入り方などのうち、どれがより強く認知機能に関連するかは興味のあるところです。

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