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睡眠のリテラシー37

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※情報は基本的に「ロハス・メディカル」本誌発行時点のものを掲載しております。特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 一日の仕事が終わると、ホッとします。その後は、寄り道をすることがあるにしても、自宅をめざします。帰宅すると、夕食はもちろん、子どもの世話、入浴など、やらなければならないことは結構あります。

 このような一連の活動が終わると、いよいよ自分のための時間になります。皆さんは、いつもどのように過ごしていますか。読書や音楽を楽しめますし、テレビやDVDを見たりもできます。その一方で、仕事も可能です。

 昔は「風呂敷残業」と呼ばれていたように持ち帰れる資料は限られていました。それに対して、インターネットや情報機器が発達した今は、かなりの量の仕事を自宅で行おうと思えば、行えるようになっています。

 仕事上、自宅残業が避けられない時はあります。ただ、いつもそうせざるを得ないとか、夜遅くまでせざるを得ないというのは考え物です。実際、自宅から仕事に関する電話をしたり、メールをしたりすることが多いと、睡眠の不調は増えるという調査結果があります。

 仕事のために実際に手を動かさなくても、仕事に関することをあれやこれや頭の中で考え続けてしまうことがあります。たしかに、大きなプロジェクトを抱えていたり、越えなければならない難題があったりすると、うまく成果を出せるか、心配になります。ですが、勤務時間が終わっているにもかかわらず、仕事のことに固執すると、寝つきが悪くなったり、ぐっすり眠れなくなったりすることがアンケート調査から分かっています。

 このことは、脳波や目の動きなどを測る睡眠の客観的な検査によっても確かめられています。翌日に対して心配事やストレスが多い時、その晩の睡眠では深いノンレム睡眠が減る、また睡眠の効率(横になっている時間に占める実際に眠っている時間の割合)は下がることが明らかになっています。

 仕事を一生懸命するのは良いことです。ただ、度が過ぎると、脳がオーバーヒートするのでしょう。その結果として睡眠が悪くなってしまうのは決して望むところではありません。

 仕事が終わってから就寝までの時間は、いわば良い睡眠をとるための助走期間と考えられます。もし快適に過ごせれば、快眠につながります。快眠は疲労回復を促します。このような流れをどうすれば得られるかについて、睡眠の研究者だけでなく、仕事のストレスの研究者が熱心に調べています。

 今のところ、一日の仕事が終わった後の過ごし方として最もお勧めできるのは、自分と仕事との間に距離を置くことです。帰宅後は仕事のことを忘れるなど、仕事から心理的に離れられると、疲労回復や睡眠に良い効果のあることが示されています。

 仕事モードの自分と休養・睡眠モードの自分とを上手に切り替えるための研究は、これからもっと大事になります。

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