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美味しすぎる理由

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食べることは人生における楽しみの一つですよね。でも、食べ物があふれ、ファーストフードや加工食品が簡単に手に入る現代社会で、ストレスのはけ口を食べ物に求めたり、ダイエットがストレスになったりするうちに、心と体の健康を失ってしまうこともあるようです・・・。

大西睦子の健康論文ピックアップ41

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。

ダイエットや食品業界の新しい流行語「hyperpalatable」は、「hyper」=超+「palatable」=味がよい、快く楽しいということで、超美味しい、大好きな食べ物という意味になります。食品業界は、いかに「hyperpalatable」な加工食品を生産するかが大きな課題となってきているのです。味、香り、色や口当たりの心地よさで、消費者に「美味しくって、やめられない。もっと食べたい!」と感じさせることが重要になります。


一方、「food addiction」=食物依存症※1も米国で問題になっています。実は、食物依存症に関する論文は1956年にすでに報告されていて、著者のラドルフ博士は、「トウモロコシ、小麦、コーヒー、ミルク、卵、ジャガイモ」に依存性が認められることを論じています。その後、2008年にプリンストン大学のアヴェーナ博士らによって、高カロリー食品、とくに砂糖の多い食品に依存性の可能性が強いことが報告されました。さらに、塩分、食品添加物を含む食品も依存性が問題になってきています。


実は近年、食物依存症は、アルコールや麻薬依存症と同じ生物学的反応によって引き起こされることがわかってきました。


コカインなど覚醒剤による薬物依存症は、ドーパミン※2という快感をもたらす神経伝達物質に関係しています。薬物を投与するとドーパミンが分泌され、快感や満足感が得られます。このドーパミンが枯渇すると、同じ快楽を得るためにまた薬物が欲しくなります。こうして薬物に対する依存症となるのです。


私たちが美味しいものを口にすると、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、満足感を得ます。そして「もっと食べたい」と思いますよね。私たちが食べ物から体にエネルギーを取り込む際、その調節に重要な役割を果たしている神経系を、「脳内報酬系」※3と呼びます。脳内報酬系は「快楽中枢」とも呼ばれ、自分へのご褒美を与える神経系なのです。ところが、「もっと食べたい」という欲求が強くなりすぎると、喜びがコントロールできなくなり、習慣化、依存、そして中毒となってしまいます。過食に関係する(むちゃ食い障害: Binge eating disorder※4、神経性過食症Bulimia nervosa※5や肥満など)人々の行動は、薬物依存症の人たちに似ています。むちゃ食い障害や神経性過食症の人には、薬物やアルコールの乱用も認められます。


さて、今回は話題の食物依存症のドイツからのレビューをご紹介させて頂きながら、食物依存症について、一緒に考えてみましょう!

Adrian Meule
How Prevalent is "Food Addiction"?
Front Psychiatry. 2011; 2: 61. doi: 10.3389/fpsyt.2011.00061
PMCID: PMC3207274


●食べ物依存症の評価

2009年に、イエール大学の研究者らは、Yale Food Addiction Scale (YFAS)という食物依存症の小テストを用いた評価法を作成しました。テストは、

1) お腹がすいていないのに、食べてしまう
2) 食べ過ぎて、疲れを感じて、動きが鈍くなる
3) ある特定の食べ物を食べないと、動揺や不安などの禁断症状がでる
4) 食べることで、ストレスを感じる
5) 食べることが、仕事、勉強や休養を妨害する
6) 食べることで、感情や身体的問題が生じても、同じ食べ物を食べ続ける
7) 以前と同じ量を食べても、ネガティブな感情が続き、前のように楽しい気持ちにならない

などの、25のクイズがあります。答えは、以下から選択して、最終的に評価されます。

1) 全くない
2) 1ヶ月に1回
3) 1ヶ月に2〜4回
4) 1週間に2〜4回
5) 1週間に4回以上


また、2000年にアメリカ心理学会(American Psychological Association: APA)が報告した物質依存症の基準に沿って、食物依存症状を計算することもできます。


●小児期および思春期の食物依存症

小児および青年における食物依存症の症状を調べた研究では、 太っている子供たちや若者の15.2%が、 「多くの場合」「通常」または 「常に」食べ物に依存しているという答えでした。よく見られる症状は、1)長期にわたる食べ過ぎのため、2)ダイエットしてみても努力は失敗に終わり、3)なおも食べ続ける、といった経過です。回答者の77%は、彼らが太り過ぎの体重に達した当初よりも多くの量を食べていることが示されました。「どうしてたくさん食べるようになったのか」という質問に対しては当初、「食べ物に満足できない」という返事はたった15%でしたが、食物依存症の定義を教えたところ、回答者の29%は、ほぼあらゆる食べ物に自分が依存しているとの自覚を示しました。


●成人の食物依存症

よく見られる症状は、1)いつもダイエットを意識している、または繰り返し失敗に終わるダイエット、2)にもかかわらず食べ続ける、3)食べ物を手に入れ、食べ、食べてから回復するために多くの時間を費やす、といった経過です。


●食物依存症とBMI

以下、Yale Food Addiction Scale (YFAS)を用いた食物依存症と診断された割合(%)とBMIの関係です。やはり、肥満の人に依存症が多いようです。また、普通体重の人より痩せ型の人に依存症の割合が多く認められました。この問題は、今後のさらなる研究が必要とされます。また、むちゃ食い障害の患者さんは、高率に食物依存症を認めました。

1) BMI18.5未満(低体重)=10.0%
2) BMI 18.5以上、25未満(普通体重)=6.3%
3) BMI 25以上、30未満(体重過多、肥満)=14.0%
4) BMI 30以上(肥満)=37.5%


もちろん、食べることは生きていく上で必要ですし、楽しいことです。ただし、依存症になると精神的にも身体的にも健康に害を及ぼしますから、注意が必要です。食物依存症の方は、専門家の治療やカウンセリングが必要です。


「近頃、ストレスや睡眠不足のせいで食べ過ぎているな」という方、食べることに依存している可能性がありますよ。まず、規則正しい生活リズムにリセットして下さい。朝食、昼食、そして夕食以外に、間食を食べ過ぎていませんか? 動かないで間食をとると、食事の時間にお腹がすかず、悪循環になりますよね。また、ストレス解消法として、食べることではなく、運動、音楽、入浴やストレッチなど、他の方法を試してみてください。そして食べ物に関しての考え方を見直してみましょう。加工食品やファーストフードは、簡単に食べることができますよね。しかしそういった食品は、砂糖、脂肪や塩分が高く、いつも食べていると依存性が生じます。ぜひ自然な素材の食事を取り入れてみて下さい。食べることの本当の大切さを知り、食生活を楽しんで下さいネ。


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