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賢い子供を育てる方法

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親ならば誰しも子供の健康と成長をまず願うもの。でも、あわよくばそれに加えて、"賢い"子であってくれたら、というのが本音ですよね。そのために親が子供に与えるべき教育や環境が、科学的に検証されたようです。気にならずにはいられません・・・。

大西睦子の健康論文ピックアップ33

大西睦子 ハーバード大学リサーチフェロー。医学博士。東京女子医科大学卒業。国立がんセンター、東京大学を経て2007年4月からボストンにて研究に従事。

ハーバード大学リサーチフェローの大西睦子医師に、食やダイエットなど身近な健康をテーマにした最新学術論文を分かりやすく解説してもらいます。論文翻訳のサポートとリード部の執筆は、ロハス・メディカル専任編集委員の堀米香奈子が担当します。


知能が学歴、そして人生の成功を導くということが、これまでの研究で確認されています。多くの研究者や教育者は、どうすれば子供たちの知能を高めることができるかを探索しています。ニューヨーク大学のProtzko博士らは、メタアナリシス※1と呼ばれる解析方法により、賢い子供を育てるために、何が本当に有効であるかを評価しました。これまでのコンセンサスは、非常に知名度の高い2~3の研究に基づいていますが、今回の研究では、生後間もなくから幼稚園年長児までの子供に関する最高レベルの研究によるデータベース、「Database of Raising Intelligence (DORI)」を用いて分析が行われました。

John Protzko, Joshua Aronson, and Clancy Blair
How to Make a Young Child Smarter: Evidence From the Database of Raising Intelligence
Perspectives on Psychological Science 8(1) 25 -40
DOI: 10.1177/1745691612462585


博士らの研究の目的は、私たちの知能を高めるために何が有効で何が効果がないかを明らかにすることです。DORIのデータは、知的障害があると診断されている参加者を除いたランダム化試験※2によるものです。さらに、単発ではなく長期間の介入試験で、広く受け入れられている知能評価の方法を用いていることが条件です。最終的なメタアナリシスの結果、以下のような4つの点が際立って、子どもの知能指数(IQ)※3を高めることが示されました。


1)長鎖多価不飽和脂肪酸※4

母乳で育った子供は、人工栄養で育った子供より知能指数が高いという報告がありますが、母乳の何の成分が知能に関係するかは特定できませんでした。研究者らは人工栄養児について、神経系の発達に密接に関連すると考えられている長鎖多価不飽和脂肪酸、特にドコサヘキサエン酸(DHA)※5の補充に関する研究を調査し、DHAの補充は人工栄養児の知能指数を3.5点以上高めることがわかりました。その他、鉄、ビタミンB複合体、リボフラビン※6、チアミン※7、ナイアシン※8、亜鉛※9なども、知能を高める可能性はありますが、今後さらに検証するべきです。


2)教育環境の変化

経済的に恵まれない子供に早期に教育を導入すると、知能指数が4点以上上がることがわかりました。特に、単純な家庭教育ではなく、特別にデザインされた教育センターで教育環境を強化することにより、知能指数が7点以上も上がりました。環境の複雑さは子供の知能を高め、認知機能に刺激を与えます。 ただし、これらの介入は、非常に幼い子供たちに効果はありませんでした。


3)対話型の読書

以前の研究で、貧しい暮らしで育った子供たちが裕福な環境で育った子供よりも知能指数が低いという報告があります。理由として、認知刺激の違い、特に読書を通じて両親と対話をする経験や、本の数の差が考えられきました。ただし、本をたくさん持っているだけでは子供知能指数は上がりません。対話型の読書が子どもの知能指数を高めます。両親が、子供の興味を理解して子供に読書を薦める、さらにオープンエンド型の質問(質問に対して自由に文章や単語で回答をする)の仕方を教えることで子供の知能が上がると考えられています。ただし興味深いことに、子供が4歳以上になると、対話型の読書が子どもの知能指数を上げることはありませんでした。子供の言語がより高度になり、対話型の読書はもはや効果がないようです。言い換えれば、両親は子供が1~3歳の間に対話形式で自分の子供に読み聞かせをしてやらねばなりません。ちなみに、幼児用のビデオトレーニングなどのプログラムは、親のお金の無駄であることが示唆されました。さらに、フォニックスや音楽を聴くことも、知能指数と関連していないことが判明しました。


4)年少・年中教育

幼稚園年少・年中以下のクラスへの参加は、知能指数の高さと関連していました。特に、 幼稚園のプログラムに言語発達を促す特別な要素が組み込まれている場合、知能を高めることがわかりました。ところが、幼稚園の滞在時間をより長くしても、知能指数の増加にはつながりませんでした(長いと、しだいに挑戦性や複雑さが失われてしまうからかもしれません)。


博士らの大きな目標は、知能の本質を理解すること、そして、どうすれば発育段階に応じて知能を大事に育てられるのかを理解することです。この研究は、知能を理解するための最初の一歩であり、これがすべてではありません。質の高い研究のさらなる集積が必要です。


みなさんは「人生の成功」って、一体いつ、誰が決めると思いますか?勿論、いろいろな考え方があると思いますが、私は結局自分で判断するしかないと思います。「人生の成功」のすべてが知能指数、高学歴によるとは思いません。人生は楽しいこともたくさんありますが、辛いこともたくさんありますよね。その辛い状況において、問題を解決するために、知能、さらに知性が必要とされると思います。私が、今回の報告で一番興味をもったことは、「対話型の読書」の重要性です。やはり、優れたコミュニケーションの能力を養うことは本当に重要です。なぜなら、オープンエンド型の思考は、困ったときでも、柔軟性をもっていろいろなアイデアを生み出すことができるからです。そして、前向きに問題を解決できると思います。

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