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賞味期限、過ぎてもフツーに食べませんか?

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先週、「給食に賞味期限切れの乳酸菌飲料 愛知の幼稚園」というウェブ報道がありました。そうか、賞味期限切れか...。3つのことを考えました。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

●考えたことその1

「賞味期限、過ぎても実質的には健康上問題ないよね」

以前ブログに書いたのですが、まだまだ混同されることが多い「消費期限」と「賞味期限」。この2つは完全に似て非なるものです。

消費期限は、品質(状態)が急速に劣化しやすい食品を、「食品衛生上、安全に食べられる期限」です。例えば、弁当や調理パン、惣菜、生菓子類、食肉、生めん類などに表示されていて、その期日を超えると腐りやすい、ということ。基本的には製品ごとに、メーカー側が独自に試験を行い、知識や経験も加味して、未開封のまま定められた方法で保存した場合に、「安全性が損なわれるおそれがない」期限を設定しています。ですから「消費期限」を過ぎた食品は食べないようにしましょう。

他方、「賞味期限」は、比較的品質が劣化しにくい食品に、「おいしく食べることができる期限」として表示されています。例えば、スナック菓子、即席めん類、缶詰、牛乳、乳製品などです。こちらは、未開封のまま定められた方法で保存した場合に、「期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる」期限となっています。ですから消費期限と違って、期限を超えた場合でも、多少味などは劣るかもしれませんが、直ちに食べられなくなるわけではありません。

実際、私は賞味期限切れの食品であっても、食べる・食べないは自分で判断しています。もともと製造から何十日、何カ月ともつ食品が、数日の誤差で突然に食べられなくなるわけがないからです。そういう意味では、かつてあった製造年月日の記載がなくなったのは残念。そもそもその製品はどの程度もつことが想定されているのか、簡単に知ることができれば、どの程度賞味期限を過ぎても許容範囲か、自分なりに判断しやすいはずだからです。

食品ロスが問題になり、来年4月からは賞味期限が日単位でなく月単位になりますが、ぜひ製造年月日の表記の復活を求めたいところです。

●考えたことその2

「乳酸菌飲料って、ちょっと古くても腐らないし、乳酸菌が増え過ぎて死んでしまっていても健康効果はあるでしょう?」

今回のケースも、乳酸菌飲料の賞味期限が10日ほど過ぎていたようですが、健康上の被害が出ていないことについては「まあ、それはそうだろう」という感じです。一つには、乳酸菌飲料は糖度が高いこと。糖度が高い飲料は、ばい菌が繁殖できず、腐りにくいのです。乳酸発酵が進んでしまうことで、酸味が強くなっていた可能性もありますね。でも、経験上、飲めないほどではなかったはずですし、健康上も問題はなかったに違いありません。

他方、乳酸菌の健康効果についてはどうでしょうか? 乳酸菌が増え過ぎてももともとほとんどは胃酸で死んでしまうものですから、特に関係はなさそうです。「胃で乳酸菌が死んでしまうのに、何で乳酸菌飲料やその他の乳酸発酵食品(漬物、チーズ、ヨーグルト、味噌、納豆など)は腸に良いとされているの?」と思うかも知れません。それについては、死菌でも整腸はじめ健康効果があることが知られています。だから最近、お菓子などによく入っているのを見かけるんですね。(詳しくはこちら

ちなみに、プレーンヨーグルトを買ってきて、冷蔵庫の中であえて賞味期限が切れるくらい置いておくこともよくあります。そうすると、どんどん水分が出てきて、固形成分がより濃縮され、やや固くなるのです。近年流行のギリシアヨーグルトのように濃厚な味わいが楽しめますよ!

●考えたことその3

「要するにこの報道は、ずさんな管理体制への社会的制裁なんだな」

となると、実質的に被害が出る恐れはほとんどないのに全国的なニュースになってしまうのは、かなり手厳しい反応にも見えてきます。でも、記事を最後まで読むと、この扱いは妥当だということが分かってきます。

この幼稚園では今年9月にも給食を食べた園児らが食中毒を起こして入院。10月20日から現在の業者に変更したばかりだった。

既に被害が出てしまっていたのですね。そういう場合、業者は反省して管理体制を改善するのが普通ですから、かえってほかの業者より安全になることも珍しくないですし、そうあってしかるべきものです。ところが今回は信用を二重に裏切った形です。食べることは、健康や命に直結します。その点の認識の甘さ、欠如に対する社会的制裁と見れば、これくらの報道はむしろ軽いくらいですね。

なお、消費・賞味期限内であっても、保管方法が適切でなければ、品質は保てません。消費期限のものなどは、買ってきてから冷蔵庫に入れるまでに長時間、常温に出しっぱなしにしないこと。同様の理由で、冷蔵庫内部の温度が上がるようなこと(ドアを長時間開ける、開け閉めが頻回、まだ温かい食品を入れる、など)はやめましょう。食中毒リスクが高くなります!

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