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認知症でも働ける! 早期診断・早期対処を阻む社会 その限界は近い

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認知症でもできること 達成感が自立を後押し」という記事を読みました。2030年には65歳以上の高齢者の2割以上を占めると見られる認知症。これまでの認知症介護の在り方には限界が出てくるに違いありません。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

この記事の中で紹介されているデイサービス施設「DAYS BLG!」、実はかつて「ロハス・メディカル」でも、連載コラム「ハート・リング通信」の中で取り上げています。

記事を引用してみます。

東京都町田市にある自動車の販売代理店を訪ねると、高齢の男女5人が代理店の店先に並ぶ新車の洗車に精を出していた。5人は認知症の人が通うデイサービス施設「DAYS BLG!」の利用者だ。作業をはた目で見る限り、誰が認知症なのか見分けがつかなかった。
 12年8月にDAYS BLG!を開設したNPO法人の前田隆行理事長(41)は「認知症の人は皆一緒くたにされがちだが、やれることは一人ひとり違う」と話す。洗車のほかにも、問屋から野菜を配達したり、保険代理店が扱うパンフレットを修正したりといった活動で認知症の当事者は依頼した企業からの「謝礼」を受け取る。

記事ではこのほかにもう一か所、入所者が食事の準備や庭の掃除、さらには近所の掃除など、それぞれできることをやって、コミュニティや社会に貢献し、それが自立支援につながって要介護度が改善される、という好循環を生んでいる介護施設を紹介しています。

要するに、認知症となっても、一人個人差はあるにせよ、実はまだまだ社会のためにできることがたくさんある、ということ。それによって本人の症状も改善して、場合によっては認知症リハビリテーション(詳しくはこちら)と同じような効果まで期待できるのです。本人にとって精神的にも医学的にもメリットがあるということですし、社会全体としても膨れ行くばかりの介護費用の軽減につながります。

以前から思っていたのですが、「介護」という言葉は完全に上から目線ですよね。それは介護される側にとっても不本意かもしれませんし、介護する側にとっても負担でしかありません。個人にとっても社会にとっても、犠牲になるものが大きすぎるのです。

そのために、社会は認知症をなかなか受け入れません。認知症患者は日常的に差別的な扱いを受けており、それを感じています。認知症を発症しても、直ちにすべての判断能力や感情が失われるわけではないのですから、その精神的苦痛は大変大きく、自ら社会を遠ざけています。「どうせ差別や偏見の対象にされるだけなのだから、診断を受けたくない」と考えるのも、合理的な選択なのです。それが症状を悪化させる悪循環を作り出しています。(詳しくはこちら

高齢化の進展に伴って、認知症患者は着実に増えていきます。レッテルを張り、隔離するやり方は、患者にとって悪影響が大きいばかりでなく、社会もそれを支えきれなくなる日が来るのではないでしょうか。

今回の記事でも、またロハス・メディカルでも、行きつく結論は同じようです。必要なのは、「共生」です。それは認知症だけの問題ではありません。

「かわいそうな人とレッテルを貼るのでなく、加齢に伴って障害を持つようになった部分も含めて1人の尊厳ある人と捉え、その困難になった部分を支えながらも、その人と共に生きていくという接し方が重要なのだと思います。それは認知症でなくとも、加齢に伴って何らかの支援を必要とするようになる高齢者全体に共通します」と河野特任助教は言います。  つまり、何かできないことがあっても、その部分を含めて1人の人間として包み込んでいく。そんな社会になっていけば、障害者も高齢者も将来の高齢者である現役世代もみんな嬉しいはずです。他の疾患で、同様の差別や偏見に苦しんでいる人たちだって救われることでしょう。
(ロハス・メディカル2013年8月号「認知症を知る15 共に暮らせる社会をめざして」より)
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