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おたふく風邪 難聴だけでなく子供が出来なくなるかも

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私が子供の頃、おたふく風邪、はしか麻疹、今年も西ヨーロッパ諸国で麻疹が流行中!)、水疱瘡といった感染症は、「子供のうちにかかっておくべき」病気でした。昭和以前の生まれなら、まだそう思っている人もかなりいるんじゃないでしょうか? 当時はまだワクチンがなく、でも、一度かかれば抗体が作られて(免疫がついて)もう二度とかからなくて済む、という理解だったはず。むしろ子供の頃にかからず大人になってからかかると重症化して大変だ、と聞かされていましたよね。今問題になっているのは、難聴。しかし、それだけではないのです...。

堀米香奈子 ロハス・メディカル専任編集委員

実際、私は小学生の時におたふく風邪にかかっています。しかもそれを家族にうつしてしまい、男性の一人は睾丸炎を発症して片方の精巣が機能不全となってしまいました。もう子供を望む年齢ではなかったのがせめてもの救いでしたが、子供よりも高熱に苦しみ、回復に時間がかかっていました...。合併症を調べると、難聴や睾丸炎の他に、髄膜炎や膵炎、さらに男性ばかりでなく女性も卵巣炎などのキケンがあるとのこと。なかなか恐ろしい病気です。

さて、今では上の3つの感染症は、どれも適切なワクチン接種で予防が可能になっています。今の時代のお母さんたちなら、ご存知の方も多いと思うのですが・・・。

問題は、その費用。全額自己負担なら1回5000~7000円はしますし、確実性のために2回接種すれば簡単に福澤諭吉は飛んでいきます。私の自治体では一部公費助成を行なっているので1回なら2000円の支払いで済みますが、2回目は全額自己負担です。

今回、合併症として難聴になってしまう子供の多さに驚きが広がっていますが、おたふく風邪の予防接種が公費負担(=定期接種)ではなく、自己負担(=任意接種)であることも、患者数を増やしているに違いありません。

ワクチンの有効性は明らかだと言います。それなのに、なぜ定期接種ではないのでしょうか?

国立感染諸研究所は以下のように説明し、見解を述べています。

おたふくかぜワクチンの効果と安全性は諸外国での成績などより明白であるが、わが国では残念ながら現在も定期接種の対象になっていない。その主な理由はMMRワクチンによる無菌性髄膜炎の発生であった。ワクチン接種に伴う無菌性髄膜炎の発症は自然感染よりはるかにリスクが低い。何より、ワクチンの接種率が高く維持され流行がコントロールされれば、合併症の併発も予防され、その後疾患が排除されれば、はじめてワクチン接種を中止することも可能となる。

ワクチンの副作用を知っていてあえて打たせず、「自然にかかった方が良い」と考えている親御さんもいるかもしれませんが、その方針はどうやら正しいとは言えないようです。ぜひ定期接種化を望みます!

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